おじさんが、甥っ子から教えられた話

星川亮司

第1話47歳のおじさんが30歳の甥っ子から教えられた話。

兄に不幸があり、久しぶりに甥っ子と顔を合わせた。


子供の頃は、大家族で一緒に住んでいて、私が甥っ子の勉強をよく教えたりもしたのですが、20年の間で逆転してしまった。


その違いは、性格の違いにあります。


私の性格は、切り込み隊長型で何をやらせても早いが精度が悪い70点でOKとする速攻型。

甥っ子は、じっくり問題を解決できるまでコツコツ何度でも調べて学んでをつづけ100点を目指す慎重な遅行型の違いがある。


例えば、ラーメンを頼むとき、私なら、定番メニューをぱっぱと決めるが、甥っ子は頭の中で色んな可能性を吟味して正解を吟味する。


「喪主は僕です」


私は窘(たしなめ)められた。


葬儀会社との打ち合わせや、それら諸々のお世話になる人との判断で、つい、口をはさんでしまうからだ。


30歳と若い甥っ子にとって葬儀の喪主は、初めての経験だろう。良かれと思って口をはさんだのが叔父が甥に窘められる逆様をうんだ。


そうです、おじさんは出しゃばちゃいけません。


しかし、それができない速攻型。甥っ子が熟考しているポイントが私には今一つ理解できません。結論は決まっているのだから、中はどのようにも臨機応変に動けばいいように思います。


ですが、火葬場から帰りの車の中、甥っ子が兄に言われた言葉としてこう言いました。


「早く、一人前なれよ!」


甥っ子は、遅考して、間違いのない判断をします。


”早く、一人前になれよ!”


は、甥っ子の口を通じて私に伝えられた最後の発破だったのかも知れません。



〈了〉

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おじさんが、甥っ子から教えられた話 星川亮司 @ryoji_hoshikawa

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