案内〔壱〕.朱鷺國
「どうもユウ様!初めまして!
ユウ様の護衛の者です!
青空を背景に雲の上で、茶髪を風になびかせたまま白色の目が伏せられ弧を描く。彼はユウの手を取り握手をするとぶんぶんと大きく振った
「僕はユウ様を各國の良い所へ案内し主要人物の方々とご挨拶いただく中で、護衛をするために来ました!ご案内している間は僕も休暇扱いなので〜色んな所を沢山まわって、いい時間を過ごしましょう!初めは何処が良いですか?ってああそうか、ユウ様は選べないんでした...すみません久しぶり過ぎて忘れていました…」
彼は一瞬顔を伏せるとすぐに明るい顔へと戻りそう話した。ユウは己が選べない理由がわからず首を傾げる。それを見た鷹は言われてないんですか?と言い説明を始めた
「ユウ様は人間という括りではなく読者というものです。ユウ様の首にかけてるその鍵こそが私は読者であると証明する物で白鳥國の時は必須の貴重品となってます!読者は…まぁ多く?色んな考えを持つ人もいますから、朱鷺國が良い人翡翠國が良い人などなど…だから君に選択権はあるようでないんです。難しいですが理解してくれると助かります」
そう言って明るく説明した彼はこちらの頷きを確認し、指を鳴らした。するとどこからともなく
「朱鷺國でした!朱鷺國は綺麗でいい所ですよ!ユウ様は事前情報読んできました?会話の仕方は大丈夫ですか?当主の苗字は?…よし!行きましょう!」
彼はそうやって質問をし答えを聞くと笑顔で手を引き雲の穴へと共に落ちた
「到着!ここが朱鷺國です!ユウ様の世界で言う戦国時代ぐらいの建造物や文字ですね!朱鷺國で有名なのはやっぱり祭り!輝く鬼火の提灯が沢山ぶら下がってて、御神輿にはからくり人形が沢山踊って〜それで〜」
つらつら出る彼の言葉がオタクのようでもしや彼は祭りオタクなのかと疑った
「聞いてますかユウ様ぁ!その顔は聞いてないですね!布越しでも分かりますからね僕は!あと僕は國文化オタクなので祭りに限らずなんでも喋れますよ!ってああそうこうしてるうちに如月様が扇子演舞を終えちゃってる!ユウ様行きますよぉ当主様へのご挨拶へ!!」
そう言って足早に当主様に近づく鷹に引っ張られ、勢い良く当主様の前まで出された
「初めまして、君がユウ殿だね?私は姓を如月、名を朱鷺と言う。よろしくね」
優しい声色で水色の髪を揺らし握手を求める姿は色気がありつつ綺麗で少し見蕩れたあと慌てて手を握った
「鷹も、今日はよろしくね。なんなら私も二人とともに祭りを見てまわろうかな?」
「是非是非!僕も如月さんと一緒に回れるの嬉しいっす!ユウ様、行きますよ!」
如月さんの言葉に喜ぶ彼は繋いだ右手をそのままついて行った
「おおー久しぶりに見たっす!神輿だ!きゃ〜!」
「君は本当にこういう國文化好きだねぇ…ほらあそこで尺八吹いてる子がうちの子の一人、
指を指した如月さんの方を見れば銀髪に金色の目左目が隠れた青年が目を細めて吹いていた。彼は如月さんに気づいたのかこちらをちらりと見やると合間で手を振った。そんな彼を如月さんは微笑ましく笑みを浮かべ手を振り返していた
「神輿が終わり次第、鳴稲にも挨拶してもらおうか。まずは
そう言って右手に持っていた扇子を開き口に当てて笑った。その姿はあまりにも妖美で綺麗であり皆見惚れてしまうのではないかと感じるほどである。
そんな事を考えつつ彼らについて行くと紫陽花と書かれた看板をぶら下げた店に着いた。
「ここは緑茶と茶菓子がとても良くてね。貸切可能、個室の店だから私もよく行っているよ。」
「ここの団子が最高なんです!御手洗団子なんか甘いのとしょっぱいの選べるんですよ!あとあと…」
「鷹くん?店前でずっといるのは迷惑だから先に入ろうね」「はい!!」
二人の会話を微笑ましく見ていると彼らはさっさと進んでいくので急いで彼らについて行った
暖簾をくぐれば広がるのはいいお茶の香りでこの匂いだけでもここが高級でお茶が最高に美味しいであろうことが分かる。靴を脱いで彼らについて行くとひとつ閉まっている襖の前に止まった
「ここにあの子たちがいるよ。先に私が話を通しておくからいいよと言ったら入ってね」
そんな言い方をされるとまるで転校生のようだ…鷹は如月さんと一緒に行かないらしい
「僕はユウ様と一緒に入りますよ。如月さんと共に入ると護衛の方々の目が怖いので…」
そう話す彼は苦い顔をしており、その顔で何となく過去に何かあったのだと察してしまった。
その後他愛のない会話を繰り広げていると、少々疲れ気味な声で二人とも、いいよと聞こえたのでガラガラと襖を開けると、そこには茶髪の男性に後ろから抱きしめられ白髪の眼鏡をかけた男性に肩をかしている如月さんが居た。
「あはは…何も言わないでくれると助かるかなぁ」
「如月さん…ここにお酒は無いはずなんですけど…?」
「
そう言うと鷹は茶髪の男から如月さんをひっぺがし投げ捨て、白髪の眼鏡をかけた男も同様に投げ捨てた。……いいのか、これ
そんなこと考えていれば目の色以外全て同じの双子が水を持って襖を開けてきた。
「主人、お冷貰ってきました!」「きましたぁ!」
「ありがとう二人共、机に置いておいてくれ。」
彼らが元気よく言えば、癒されるのか如月さんはにこにこと中へ促した。そうしてるとさてと言って如月さんが話しはじめた
「じゃあまずはそこで投げ飛ばされて寝ている二人が肇と双海。茶色が双海で白が肇、肇は鳴稲の兄だよ。それで奥でお茶会してる二人が
そう言われて頭の中で整理する。
投げ飛ばされた茶髪が少し長く左目が隠れている黄緑色の瞳の男性が双海さん、同じく投げられた白髪でとても髪が長く三つ編みにしている金色の瞳の男性が肇さん、長髪の黒髪を下ろしていて首に蛇を巻いた藤色の瞳の女性が御咲さん、同じく長髪の金髪を下ろしていて齢がとても幼く見える少女が夜宵ちゃん。赤みがかった黒髪の短髪に金色の瞳が翠衣くん、赤色の瞳が悠衣くん。
……こんな感じかと整理が終わる頃には鷹もこちらの紹介をしていたようで一応頭を下げておく。
「どうもユウさん。私は御咲、よろしくね」
「俺は翠衣」「ゆいだよ〜」「「よろしく」」
「やよいです!よぉしくね!」
倒れている二人を除き皆からよろしくと言われ少し嬉しくなりつつ頭を下げた。
(ユウ様〜?事前情報忘れましたか〜?)
そう小声で言う鷹にびくりと肩を揺らし小声で謝った。もしこれが演技ならば妖はヤバいのだと思う。
「さて挨拶も済ませたし、茶菓子を食べようか。私が奢るよ。好きなだけ選びな」
そんな如月さんの言葉に皆が目を輝かせ、あれやこれやと頼み始め、鳴稲さんが来た時には沢山の茶菓子が置かれていた。
「如月さん!今日はありがとうございましたっす!また来ます!」
「いつでもおいで。ユウ殿も…ね?」
己のいい声を使いこちらに問いかける言葉にこくりと頷き感謝を伝えた。その後、如月さん達と別れを告げて鷹さんと初めに落ちた場所へと戻った。
「よし…じゃあ戻りましょうユウ様!お身体失礼します!」
そう言うと彼に俵担ぎされた。突然、浮遊感に襲われ下を見れば浮いている。なぜと思っていると
「僕が飛んでるんで浮いてるんすよ!これでも鷹なんで!すぐ着くんで落ちないように気をつけてください!」
……彼は名の通り鷹らしい。
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