2-① ギョギョッ!まるごと美女とサメだらけのジャングルプール大水泳大会!ガブリもあるよ!

「私立サメ学園毎年恒例のジャングルプール大水泳大会は必ず成功させてみせる!」大型プールにカイゼル髭の初老男性の演説が響く。「このワシ、深堕甚兵衛ふかだじんべえの手によってな!!」

「理事長閣下の仰る通りで御座います」「御座います」「ます」機械的な御追従が続いた。

「信じらんないわね、この状況で水泳大会なんて」学校指定水着の上に白Tシャツを羽織った跳子が呟く。空は一面の曇天、気温も低い。

「仕方ないだろ、校長はじめ教職員は全員理事長のロボットなんだ」城敷は最初から見学を決め込んだ制服姿で答えた。「見てみろよ、ほら」

「ギギギギ…仰ル通リデ御座イマママ」一人の教師が煙を吹いてプールに転げ落ちた。「ありゃ世界史の丸田だ。旧式過ぎて交換部品も無い」

 人工的に密林を模した植生のプールサイドには、学生に似合わぬ派手な色合いに露出の高い水着を身に纏った女子が多数並んでいた。しかし誰一人理事長の話に耳を傾ける者などいない。好き勝手に化粧や煽情的なポージング、無為な雑談などにかまけている。

「まだこの学園にあんなに生徒がいたんだ。でもなんで女子だけ?」「ありゃウチの生徒なんかじゃねーよ」「どういうこと?」

「こうしてお集まりいただいた皆さん、地下グラビアネットコスプレインフルエンサーアイドルの皆さんの、動画配信んおお力添ええええええええ」

「あれ、理事長もロボットなの?」「そんなわけねーだろ」しかし、明らかに理事長の様子は異常だった。暑苦しいスーツ姿の内側が蠢動を始める。まるで内部に、何かが存在するように。深い心の淵に、何かを飼っているように。

「ここに私立サメ学園、ジャングルプール大水泳大会の開幕を宣言するッ!」私立サメ学園理事長、深田甚兵衛の身体はその瞬間大爆発した。「あれは!」「サメよ!あんなに沢山の!!」

 極彩色の水着美女達に向かって、ピラニア・サイズのサメが無数に襲い掛かる。ありとあらゆる肌色はたちまち深紅に染まり、プールは爆発したトマトジュース工場の様相を呈した。

 城敷は跳子のウイッグを脱がすと、小柄なイワトビペンギンを小脇に抱えた。

「ちょっとー、やめてよー」「逃げるしかねえだろこんなの!」

 プールサイドの人工密林の影からも、雨後の筍のようにサメが湧き出した。

「密かに産みつけられていたサメの卵が孵化したんだ!この学園はもうダメだ!!」

 ふたりは、いや一人と一羽は、地獄と化したプールからの脱出を試み走り出した。

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