私立サメ学園

あぼがど

オープニング

 私立サメ学園とは!


「サメのように抗い」

「サメのように荒ぶり」

「サメのように生きる」


 この3つを教育理念として掲げる、中高一貫制の巨大学園であるッ!

 終戦直後に設立された小さな教育機関は、昭和平成令和の時代を通じてその勢力を強化拡大し、卒業生ならびに学園関係者による堅固な人脈を構成して、いまや日本社会を影から操る強大なフィクサーとしての地位を占めるまでに至った。

 絶海の孤島を占有し墓標のようにコンクリート建築が乱立する私立サメ学園の威容は、まるで軍艦のような禍々しさで見る者たちを畏れさせた。もはやひとつの街と言っても過言ではないその閉鎖空間で、ある者は青春を謳歌し、またある者は夢に敗れ死んでいった。


「あれが、私立サメ学園ね……」


 いま、私立サメ学園に向かう連絡船の甲板上に、遠目に学舎を見つめる少女の姿がひとり。謎と陰謀が渦潮のように蠢動する学園を前にして、その手を、その背を震わせるものは果たして恐怖かあるいは鼓舞か。

 ひときわ高くそびえ立つ中央校舎棟の、頂部に据え付けられた黄金のサメ像が太陽光を反射し、その眩しさに思わず少女は目を覆った。

「くっ……」


 私立サメ学園。

 これから、この学園は、消失するッ!

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