第3話
二人で黙ってテレビを見る。
――なんだ、これは。
こうきも話下手だが、それ以上なのは、このばあちゃんだ。
孫に初めて会えたというのに、孫を見ずにテレビを見ているのだ。
そして信じられないことに、そのまま数時間が過ぎた。
辺りが少し暗くなる。
「もうこんな時間かえ。じゃあ飯の準備でもするかのう」
ばあちゃんは奥にある台所へ行った。
こうきはそのままテレビを見ていた。
しばらくすると、夕食が出てきた。
野菜と魚とご飯だ。
すごく美味かった。
食べ終えると、ばあちゃんは再びテレビを見始めた。
そしてしばらくしてから言った。
「お風呂入るかい」
こうきは風呂に入った。
風呂から出ると、ばあちゃんと二人でまたテレビを見た。
ここまで会話と言うものがない。
ばあちゃんが最低限の一言を言い、こうきが一言返事をするだけだ。
そのまま夜が更けた。
「もう寝るかえ」
こうきは荷物を片付けた物置で、寝た。
朝、起こされた。
「朝飯、できとるぞ」
食った。
野菜と卵と鶏肉。
これまたうまかった。
食べ終えるとばあちゃんがテレビをつけた。
二人で見る。
会話はない。
ばあちゃんはじいちゃんが死んでから、十年以上一人暮らしだと聞いた。
人と話すこと自体、もううまくできないのかもしれない。
こうきはそんなことを考えた。
しばらくするとばあちゃんが立ち上がった。
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