第2話

「よく来たねえ」

小柄な老婆が迎えた。

その表情は穏やかだ。

――これが俺のばあちゃんか。

こうきは初めて見るばあちゃんに、好印象を持った。

「それじゃあ、明後日の昼過ぎに迎えに来るから」

――えっ?

父はこうきを車から降ろすと、自分は車から降りることなく、元来た道を帰りだした。

父もいっしょにいると思っていたので、思わず「聞いてないよ」と言ったが、父の耳には届かなかった。

残されたこうきの横には、ばあちゃんが立っていた。

「家には入るかえ」

そう言うと、自分が先に入った。

こうきが後に続く。

日本間に通された。

というよりこの家は三部屋ほどあるが、すべて日本間だ。

居間と寝室と物置の三部屋だ。

居間で、とりあえず座る。

ばあちゃんがお茶とお菓子をもってきた

。お茶は渋くて、お菓子はおせんべいだ。

年寄臭いのを絵に描いたようだ。

「やれやれ、やっと会えたのう」

「そうですね」

祖母と孫なのに、こうきは思わず敬語を使った。

それ以後の会話はない。

ばあちゃんがテレビをつけて見始めた。

こんなにも山奥だが、テレビの電波は来ているようだ。

こうきは携帯を取り出した。

携帯の電波は来ていなかった。

今の日本で携帯の電波が来ない家があるなんて。

これでは持ってきた意味がない。

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