第4話 我が家、魔物撃退

「家を使って撃退する?……一体どうやったらそんなことが出来るんだ?」

 勇介は家の中をキョロキョロと見回した。


「その鏡は、他人のスキルを使うことの出来るスキルです。あなたのお祖母さま……、私の先祖ですが、ヘイゾーさまのスキルをコピーしました。それを使えば、ユースケさまにもヘイゾーさまのスキルが使えるかと。」


「じいちゃんのスキル……?」

「ヘイゾーさまのスキル無敵の要塞インビンシブルフォートレスは、この家を守り、快適に過ごすことに特化したものでした。家を守る為の能力が、その宝石のいずれかを選べば出て来る筈です。」


「いずれかって……。どれがそれだかわからないのか?」

「わたくしもすべてまでは……。把握しておりません、申し訳ありません。」


「まあ、押してみるか。」

 勇介は外を見るのに使った宝石のひとつ下の宝石を押してみた。だが何か変化が起こった様子はなかった。


「なにも変わらないな。」

「この家の何かが発動している筈です。」

「何かったって……。わからないぞ。」


「必ずありますから。ゆっくりお茶で飲みながらお探しになられたらよいかと。」

 ルクツェルはニッコリと微笑む。 


「そういやあんたらにまだお茶も出してなかったな。といっても何も用意していないしなあ……。なにか残ってないか……?」


 勇介は立ち上がり、キッチンに行って家探しを始めた。──すると。

「お、あるじゃん、お茶。……てか、賞味期限だいじょうぶだろうな……?」


 戸棚の中からお茶の入った缶と急須と湯呑みを見つけた。缶は市販のものらしいが、フィルムに書いてあったのか、賞味期限などが書かれている箇所は見当たらない。


 その時、ブン……と聞こえる小さな音。耳をすますと、さっきまで電源が入っていなかった筈の冷蔵庫が動いている音のようだった。


「まさか……ひょっとして……。」

 冷蔵庫を開けると、中にジュースのペットボトルや水、ペットボトルのお茶などが入っているのが見えた。


「これが、あの宝石の力……?」

 勇介はここにくる際、こんなものは買ってきていないので、そうすると当然さっきの宝石を押したことによって出て来たものということになる。


「この家の何かが発動する……つまり飲み物が欲しかったから、これが出てきたのか?」

 他の棚を開くとグラスがあった。


 勇介はグラスに適当に飲み物を注いで、全員分のグラスをおぼんに乗せて、何回かに分けて運んでテーブルに置いた。


「さっきの宝石はこれだったみたいだ。人数分あるから適当に取ってくれ。」

 手前の兵士がグラスを取って、それを順番に後ろの兵士に回していった。


 それを一口飲んだ兵士が驚く。

「これが噂の、異世界の飲み物ですか……!すごく、すごく美味しいです!」


「ああ、コーラは初めてか。……そりゃそうか。」

「わたくしもこれ、気に入りましたわ。こんな飲み物が世界にあるだなんて……。」


 ルクツェルがうっとりと頬に手を当てる。

「そっちはカルピスな。……まあうまいよなカルピスは。」


 今度は異世界転移に使われたと言われた、一番上の宝石の左下の宝石を押してみた。

 すると家の壁が突然光出す。

「……なんだ!?」


 バアン!!──次の瞬間、物凄い音が聞こえた。何があったのかと、鏡で塀の外を見てみると、ブラッディホーンが何やら気絶したように倒れているのが見えた。


「守護の力が働いたようですね。お任せいただければ、こちらの兵士がブラッディホーンをさばかせていただきますが。」


「あ、ああ。俺にはさばくとかよくわからんし、お前らにまかすわ。」

「かしこまりました。──ルディ。」

「はっ。」


 ルディと呼ばれた兵士が、何人かの兵士を連れて外に出て行った。鏡で見ていると、ブラッディホーンを解体している、グロ映像が流れ出し、ちょっとウッとなる。


「ブラッディホーンは美味しいのですよ。」

 ルクツェルはニコニコしていた。

「はあ……。まあ、図鑑でも見たことのない生き物がいるくらいだ。確かにここは異世界なんだろうな。それで……城だっけか。」


「はい!ぜひお越しいただけますか?」

「異世界だって納得しちまったし、この家の異常な状態も目の当たりにしたしな。帰れないってんなら、この世界のことを知っておきたい。連れて行ってくれ。」


 こうして勇介はルクツェルに連れられて、地下帝国シュクモールへと向かうことになったのだった。


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