第3話 魔物の襲撃

 テーブル越しにルクツェルが座り、その後ろに兵士たちが大勢控えて立っている。

「鏡の1番上についている宝石を押すと、こちらの世界に来られる仕組みなのです。」


「……さっき俺がそこに触っちまったから、お前たちの世界に来たってことか?そんなわけあるか。冗談はほどほどにしてくれ。」


「鏡を見ていただければわかります!鏡の1番上の宝石の右下の宝石を押せば、そとの光景が見られる筈です!」


「……。」

 粘るルクツェルに、勇介はハア……とため息をついて、

「鏡を持ってくりゃいいんだな?」

 と立ち上がった。


 再び押し入れに行き、鏡を取り出してリビングに戻る。

「それで?1番上の宝石の右下だって?」


 楕円形の鏡の右下の宝石を押してみた。

 すると鏡に外の光景らしきのもが映し出される。そこは何もない野原だった。


「……なんだこりゃ。」

 勇介の祖父の家は、山の中にあるとはいえ電柱も立っていれば、外に木々もあった。

 なのにそれらが何もないのだ。


「それが現在のユースケさまの自宅の外の風景になります。それはヘイゾーさまに嫁がれた我が国の王女が持参した我が国に伝わる魔道具ですわ。おわかりいただけましたか?」


「じいちゃんに嫁いだ?……ってことは、うちのばあちゃんが、あんたんとこの先祖ってことか?」


 確かに、よく見るとルクツェルの顔は、昔見せられた祖母の若い時の顔に似ていなくもない。異世界がどうのにはまだ実感がわかないが、ルクツェルと自分が親戚だと言われたほうが単純に納得する。


「あんたが親戚ってのは納得したよ。うちのばあちゃんに似てるしな。」

 そう言うと、ルクツェルがニコッとした。


「お祖母さまに似ていて光栄ですわ。」

「で、その鏡が、俺が異世界に飛ばされた原因だって?」


「はい。」

「じゃあ、この鏡を使えば、俺が元いた世界に戻れるんだな?」


「いえ、それは無理です。」

 ルクツェルが首を振る。

「なんでだ?」


「この魔道具は我が国の国宝なのですが、異世界転移が出来る程の力をためるには時間がかかるのです。王女がいつかこの国に戻りたいと思った時の為に授けたもので、使うにはまたかなりの年月を必要とするでしょう。」


 勇介はハア……とため息をついた。

「ここが異世界ってこと、まだ実感わかないんだが。」


「すぐに実感出来ることかと思います。ここは常に魔物が徘徊する、他国の領土です。我が国は定期的に攻め込まれていますので、他国の兵士か魔物が現れれば、否が応でもご理解いただけることでしょう。ヘイゾーさまの時もそうだったと伺っています。」


 ルクツェルがそう胸に手を当てて言った。

「まずは我が国をお救いいただいたユースケさまを、城にご招待させていただきたいのですが、ご同行いただけますか?」


「……その異世界を実感ってやつを、してからでもいいか?どうも腑に落ちねえ。」

「しかし……。」


 その時、ドーン!という音とともに、窓と壁がビリビリ……と揺れた。

「なんだ!?」


「──魔物の襲撃です!鏡をご覧ください!外の光景をご確認くださればわかります!」

 ルクツェルがそう叫んだ。


 勇介は慌てて鏡を見た。すると、鏡はスマホのようにスワイプして、映っている光景を移動することが出来るのがわかった。


 指でスワイプしていくと、家の木の壁に、水牛のような見た目の妙な生き物が、何度も突進を繰り返している光景が見えた。


「なんだこりゃ?」

 指の油で少し汚れた鏡をスウェットの袖で拭いてから、鏡に映った光景をルクツェルに見せる勇介。


「ブラッディホーンです。このあたりに生息している魔物の一種です。木に頭を突撃させる性質がありますから、恐らくそれかと。」


 その間にも、ドーン……ドーン……と、ブラッディホーンの突撃が続く。

「おいおい、家が壊れちまうぞ。」


 勇介は異世界はともかく、実際家を攻撃してきている生物がいることにおののいた。

 ルクツェルがニコッとする。

「家を使って撃退しましょう。」


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