孤児の復讐

プロローグ

 「ごめんね。桃生。こんなお母さんで、ごめん。許して」

 涙でぐちゃぐちゃになった顔で、途切れ途切れのかすんだ声で、悲しみでいっぱいの笑顔で、愛おしさが溢れ出る声で、大好きで大嫌いなあの人は消えた。

 ふわふわと真っ白なスカートが舞って、まるで絵本に出てきた妖精のようだと思った。

 一瞬、空を掴んで舞い上がったあの人を見て、妖精の国へ帰ってしまうのか、と考えた。

 けれどその姿は下に落ちて、嫌な音がして、いろんな人の大きな声が聞こえて、私はいつの間にか目を瞑ってしまっていて。

 目を開けたら知らない人がいた。

 あたしは、違う家の子になっていた。


 これは一体、いつのことだっただろうか。

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孤児の復讐 @haiena0306

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