白い嘘が僕と私を変えてくれるだろう。

エリー.ファー

白い嘘が僕と私を変えてくれるだろう。

 私がこの町にきてから、多くのことが変わった。

 駅前のコンビニは閉店している時間が多くなり、最近、潰れてしまった。

 駅の裏手にあった金物屋は火事が起きて、店主が焼け死ぬことになった。

 化粧品の空瓶が車道を溢れかえるほど散乱して、事故が多発したこともあった。

 小学校と中学校が爆破された。

 そう、全部。

 嘘だ。

 私がこの町に来てから、変わったことなど何一つない。

 駅前のコンビニは今日も夜中に光をまき散らし。

 駅の裏手にあった金物屋は継いだ息子が色々な企業とコラボしてV字回復したし。

 化粧品の空瓶は普通にゴミ捨て場にある上に、特別多いというわけでもない。

 そもそも、小学校と中学校はこの町にはない。

 何故、こんなことを思ったのか、いや、言ってしまったのか、いや、文章にしてしまったのか。

 理由は単純なのだ。

 私が退屈しているからだ。

 何も起きない、この町に、何も起こせない、私に。

 退屈しているのだ。

 もちろん、少しくらいの事件ならある。

 自転車に乗っていたおじいさんが、目の前で急に倒れて骨折をした。

 そう、これくらいのことだ。

 そして、これくらいのことで大事件として認定されるのである。

 何のせいで、ここまで平和で何も起きないのか全く分からない。

 私は平和を愛していないわけではないのだが、どうにも、この状態が続くのは我慢がならない。

 私の思う人生のために、町には変わってもらう必要があるからである。

 私はヒーローになりたい。

 色々な人を助けて、ありとあらゆる人から信頼され、多くの人に認められた存在。

 漫画の中にいる、あれ、である。

 最近は穿った見方で、ヒーロー漫画を描く漫画家いて困るものだ。

 ヒーローなんて、ただ戦って、たた救って、ただ勝てばいいのだ。

 あんなものに、哲学や美学を込めている人間の気が知れない。

 自転車と同じだ。

 乗れればいいし、走ればいいのだ。

 もちろん、浮雲のようであるべきだろう。

 私の人生も。自転車も。

 そして。

 英雄も。

 というわけで、事件を起こすために、私は爆弾を作っている。

 町には三つトンネルがあるため、そこに一つずつ設置する。他には四つある踏切に一つずつ、一つしかないスーパーに三つ、山よりも大きくて高い鉄塔があるのでそこへ九つ。

 そう、この町には鉄塔があるのだ。

 説明をし忘れていた。

 追加で話をしたい。

 この鉄塔だが、横にも縦にも大きい。

 おそらく、富士山の四倍から五倍はあろうかと思われる。

 ちなみに御存知の通り、富士山は、二十年前の第三次世界大戦で消えてしまっている。そのため、正確な比較はもはや不可能であるので、私の体感と思って欲しい。

 鉄塔には毎年、町で一番綺麗な女性と一番不細工な男性が首を切られた状態で、ぶら下げられる。これは、五穀豊穣を祈るためであり、町の人たちはその前でお酒を飲んだり、死体を棒で叩いたりして愉快に遊ぶのが習わしとなっている。

 鉄塔からは、何故か赤い雲が生成され、常に町を覆っていて、町の外から来た人間の体に赤錆を作りだすことが確認されている。そのため、日本政府はこの町を見捨てており、完全な独立及び自治が行われている。

 私は、この町の退屈を作り出しているのが鉄塔であると睨んでいる。

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