第2話

廊下に出たついでにトイレに向かおうと方向転換すると、振り向いた拍子に誰かとぶつかってしまった。反射的に謝る。

「ご、ごめん!大丈夫?」

「大丈夫。」

表情1つ変えずにそれだけ言うとその男子は2年3組の教室に入っていった。

(同じクラスなんだ。なんか、そっけない人。何考えてるかわからないや。)

それが、初めて同じクラスになる上田星うえだひかるとのファーストコンタクトだった。


始業式を終え、進級記念の写真を撮るために校庭に出た。クラス写真を撮ってから、学年全員の写真を撮るため中庭に移動する。クラス入り乱れての移動で、鈴が私に気づいて話しかけてきた。

「みなみ、お昼の教室決めた?」

「まだ~。帰りの会が終わったら担任に聞いてみるよ。でも男バス(男子バスケットボール部)の顧問だから、教室男バスが使うかもな。」

「そっかぁ。うちの担任は陸上部顧問だしなあ。どっか空いてないかな?」

そんなことを話しながら歩いていると、中庭に着いた。青々と茂る木が春の陽を浴びてまぶしい。

カメラマンさんの指示を受けながら少し寄ったり位置調整をする。気づくと私の隣には原を中心とした同じクラスの男子のグループがいて、その中に上田くんもいた。隣に立つ男子と何か話しながら笑っている。

(あ、この人笑ったりするんだ。さっきと全然違う顔。)

そんな失礼なことを思いながらぼーっとしていると、カメラマンさんの撮るという指示が聞こえてあわてて正面を向いて笑顔をつくる。

「はーい、じゃあいきますよ!3・2・1…」

カシャッというシャッター音が中庭に響く。写真で笑顔をつくるのが苦手な私は少し疲れた。


教室に戻ると早速プリントや大量の教科書が配られ、諸連絡をして帰りの会は終わった。先生のもとに駆け寄り事情を話すと、やはり男バスとお昼は一緒になるが使ってもいいとのことだった。お礼を言い、鈴のもとへ報告に行く。

「そっか、了解。荷物持って3組行くわ。」

「うん。待ってるね。」

教室へ戻ると、既に男バスの生徒が学年問わず集まってきていた。自分の席に戻り教科書をカバンに詰めていると、男バスの輪に入っていた原が話しかけてきた。ちなみに原はそのリーダーシップから男バスの次期部長だと言われている。

「あれ、村上帰らねえの?」

「ここで鈴とお昼食べることになった!部活なくなったから。」

「ふーん、せっかくならこっち来ない?同じ教室なのに離れて食うのも変じゃね?」

「男バスの皆がいいならいいけど…」

原が振り向いて部員に確認をとる。優しい先輩方や部員のようで、どうぞ、おいでよと声をあげてくれた。お言葉に甘えて男バスが集まる近くの席に座ると、ちょうど鈴が教室に入ってきた。

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