4-8:クレープのクリーム

「クレープ食べに行きたい」

 お昼休みにお弁当を食べながら、朱莉がそう言うと、緋奈ちゃんと雪ちゃんは「行こうよ」と同意してくれた。

「結局まだ行けていなかったもんね。いつにする?」

 それから三人で予定を合わせて、次の土曜日に行くことが決まった。

 雪ちゃんは「楽しみ!」とにっこり笑う。

「クレープ食べた後、カラオケも行こうよ。あ、緋奈と朱莉の家って、カラオケ禁止じゃないよね?」

「うちは大丈夫。ていうか朱莉、莉麻も一緒だよね? 土曜日は一応晴れの予報だけど……」

「ううん」

 朱莉が首を横に振ると、ふたりは怪訝そうな顔で首を傾げた。

「三人で、行きたいの」


 ◇


 駅前に新しくできたクレープ屋さんは、おやつ時ということもあって、結構混んでいた。高校生くらいの、女の子たちが多い。

 朱莉たちはお店の中にあるイートインスペースの席を確保してから、クレープを買った。朱莉はバナナブラウニークレープ、雪ちゃんはツナサラダクレープ、緋奈ちゃんはいちごカスタードクレープ。

「朱莉、莉麻と喧嘩でもしたの?」

 クレープを半分くらい食べたところで、雪ちゃんが言った。朱莉は首を横に振って、クレープをすこしだけかじる。

「最近、莉麻が変なの。朱莉の知らない友達と出かけたり、おそろいじゃないハンカチを持っていたりするの。莉麻が何考えているのか、わかんない」

 朱莉が最近の莉麻の様子について話すと、さっさとクレープを食べ終えた緋奈ちゃんが、不思議そうな顔で言った。

「それ別に、普通じゃない?」

「え?」

「だって、朱莉と莉麻は、似ていたって別々の人間でしょ。それぞれの友達と遊んだり、自分のすきなものを持ったりするのって、当たり前じゃん。全部一緒の方が、むしろ変だよ」


 ――全部一緒の方が、むしろ変。


 そんなこと、思ったことがなかった。朱莉にとっては全部一緒が当たり前で、普通だった。朱莉は莉麻で、莉麻は朱莉だったのだから。

 けれど、これは、変なことだったのだろうか。

 緋奈ちゃんははっきり「変」だと言ったし、雪ちゃんもその言葉に頷いていた。

「だから朱莉だって、莉麻とおそろいじゃないもの持ったっていいし、すきなようにしていいんだよ。クレープだって、朱莉が食べたい味を選んだでしょ? それと同じ」

 緋奈ちゃんに言われて、朱莉は両手で持っているクレープをじっと見た。たっぷりの生クリームに、スライスされたバナナ、チョコソース。上には小さくカットされたブラウニーがのっている。

 もし今日ここに莉麻が一緒に来ていたら、もしかしたら別の味を選んでいたかもしれない。そう思ったら、ぞっとした。生クリームが急に、べったりと甘く感じられた。

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