こたつといっしょ。

とろり。

第1話 前編 弱よりの中


 ぬるい。だが、まあまあいい感じだ。






「ほら、掃除するんだからこたつから出なさいよ」

「えーやだやだー、こたつに潜ってマンガ読むのが幸せなんだから」

「お母さんは掃除がしたいの! こたつの電源切るからね!」

「えー」


 私のことなどお構いなしにこたつを上げて掃除機を滑らす母。肩身の狭い私はホットカーペットにごろんと転がった。


「あんたね、話聞いてたの? お母さんは掃除がしたいの! 友達の家に遊びにいったら?」

「こたつが友達だもーん」

「あんた滅びるわよ」


 母が床を掃除しているのを横目で見ながら、マンガを読む。ホットカーペット、あったかい。


「そっちもやるからね」

「分かった」

「本当に分かってる?」

「うん、こたつ友達を蘇らせてからお願いします」

「あんたねー」


 ゴロゴロと転がりこたつにイン。さーて、マンガの続きだ。

 母はホットカーペットをひっくり返して掃除を続けている。時々こっちを見て両手を上げて呆れている。やれやれ、といった声が聞こえそうだ。


「あんた、掃除機の音、うるさくないの?」

「耳栓あるから」

ほこりは?」

「じゃーん、マスク!」


 「完璧ね」と皮肉交じりに母は呟いた。


「体重増えるわよ」

「な、なんだと……」


 母の言葉に少し躊躇いの気持ちが湧いた。確かに体重が最近少し増えている。このままではいけない……。


「よ、よし、こたつに入って腹筋しよう」

「どこまでぐーたらなのよ、あんた」


「いち……にぃ………………さ、んっ……………………ぎ、ギブ」

「散歩でもしなさいよ。健康に良いわよ、体重減るし」

「んー、明日から散歩する」

「本当?」

「ほ、ほんとだよ……!」


 とは言ったものの、母には私の意志などとうにお見通しだった。



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