音のない世界に生きる私が、あやかしの妻になりました

四条 葵

序章 愛のない結婚


『お前を愛すことは決してないだろう』


 嫁ぎ先で迎えた結婚初夜。

 目の前にある美しい顔は、感情を失ったかのようにぴくりとも動かず、妻となった私にそう告げた。


『お前も承知の上でここへ来たのだろう?』


 私も同じように感情を押し殺して、こくんと首を縦に振った。


 ええ、分かっています、旦那様。

 私は決して愛されることなどないと。

 ただお傍に置いていただけるだけでよいのです。


 それだけで、私は幸せなのです。



 私の居場所はもう、ここにしかないのだから―。


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