第8話 結構な額が入ったぞ

街の入り口が視界に入ると、心の底から安堵が込み上げてきた。冒険の疲労感が一気に押し寄せる中、俺たちはゆっくりと石畳の道を歩き出す。


「リュシア、無事に戻ってこれたな。」


「はい、ご主人様。今回の冒険も素晴らしい成果でした。」


リュシアの言葉には、温かさと誇らしさが滲んでいた。俺たちの足取りは自然とギルドの建物へ向かう。冒険者たちが集うその場所は、活気に満ちていて、日常に帰ってきた実感を与えてくれる。


ギルドの大きな扉を開けると、内部は相変わらず騒がしかった。仲間と報告を済ませる者、次の依頼を吟味する者、武器を手入れする者……さまざまな人々が行き交っている。


「ご主人様、まずは討伐記録の登録を行いましょう。」


リュシアが優しく促す。俺は彼女の言葉に頷き、カウンターへ向かった。ギルドのスタッフが忙しそうに書類を整理している。


「討伐記録の提出をお願いしたい。」


俺が声をかけると、若い男性スタッフが対応してくれた。彼は俺のギルドカードを受け取り、端末に通して記録を確認する。


「ええと……今回の討伐記録には、『影森』と『風刃の回廊』のモンスターが含まれていますね。ボスモンスター『風牙の王』も討伐されています。すごいですね、これは高い評価です。」


スタッフは感心したように言いながら、手際よく作業を進めた。その間に、リュシアが穏やかに話しかけてくる。


「ご主人様、討伐報酬はギルドポイントとしても付与されます。それを活用して新しい装備や素材を手に入れることも可能です。」


「なるほど、次の冒険に備えるってわけだな。」


「はい。そのためにも、今回の成果をしっかりと確認しておきましょう。」


少し待つと、スタッフが再び俺に話しかけた。


「討伐記録の登録が完了しました。それでは報酬をお渡ししますね。現金ではなく、ギルドポイントとして付与される形となります。」


ギルドカードに追加されたポイントが表示される。それを見て思わず目を見張った。


「すごいな、結構な額が入ったぞ。」


「ご主人様の努力の成果です。次の冒険の準備に役立てましょう。」


リュシアの穏やかな微笑みに、少し気恥ずかしさを感じる。だが、確かにこのポイントは重要だ。次に進むための武器や防具、必要な道具を整えるためには欠かせない。


「それでは、次は生産エリアに行きましょう。」


リュシアに導かれながら、ギルド内の別の区画へと足を運ぶ。そこは職人たちが集まり、さまざまなアイテムを作り出す生産エリアだった。金属を打ち付ける音や、機械の動作音が賑やかに響いている。


「ここで何をするんだ?」


「ご主人様が採取された『輝晶石』を加工し、新たな装備やアイテムを作ることができます。それによって、次の冒険での戦力をさらに高めることが可能です。」


「なるほど、じゃあ試してみるか。」


俺たちは加工職人の一人に声をかけた。その人物は年配の男性で、筋骨隆々とした姿が頼りがいを感じさせる。


「輝晶石を加工してほしいんだが、頼めるか?」


「おう、もちろんだ。あんたのギルドカードを見せてくれ。」


俺はギルドカードを手渡し、リュシアがバッグから輝晶石を取り出した。それを見た職人の目が輝く。


「こりゃあ珍しい素材だな。これだけの品質のものを手に入れるなんて、あんたら大した冒険者だ。」


職人はそう言いながら手際よく作業を進めていく。輝晶石を丁寧に削り、何かを組み立てている様子が見える。その間、リュシアが静かに説明を加えてくれる。


「ご主人様、輝晶石は魔力を増幅する特性を持っています。それを利用して武器や防具に応用すれば、戦闘能力が飛躍的に向上します。」


「そんなすごいものなのか……次の冒険が楽になりそうだな。」


しばらく待つと、職人が完成品を持って戻ってきた。それは小型の指輪で、透明な輝きが眩しいほど美しい。


「できたぜ。この『輝晶の指輪』は魔力を増幅させる効果がある。特に魔法攻撃を得意とするやつにはもってこいだな。」


「ありがとう、これで次の冒険も安心だ。」


「また素材が手に入ったらいつでも来な。しっかり鍛えてやるよ。」


職人に礼を言い、リュシアとともにギルドを後にした。その指輪を指にはめ、改めて冒険への意欲が湧いてくる。


「リュシア、これで次の準備も万端だな。」


「はい、ご主人様。これからもおそばで支えさせていただきます。」


その言葉に背中を押されるような気がした。次の冒険はもっと厳しいものになるだろうが、リュシアとともにならきっと乗り越えられる。ギルドの外へと続く街の景色を眺めながら、俺たちは次の挑戦に向けて歩き出した。

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