理想の全肯定メイドと行く現代ダンジョン攻略〜どんな時も甘やかしてくれる完璧で究極のメイドが、頼れる相棒として共に戦い、迷宮攻略のたびに努力を褒めてくれる。甘やかされ、認められながら生きるハクスラ生活〜

☆ほしい

第1話 俺は……俺を全肯定してくれる存在が欲しい

「――これで、あなたの人生は終わりです。」


声が響いた。どこか落ち着き払った声だったが、冷たさはなかった。目を開けようとすると、そこには真っ白な空間が広がっていた。どこが上でどこが下かも分からないような不思議な空間だ。


「ここは……どこだ?」


声に出したつもりだったが、言葉が音として聞こえることはなかった。ただ、自分の意識の中にその言葉が響いただけだ。


「ここは、死後の世界。あなたの魂を次の段階に導くための中継地点です。」


視線を動かそうとすると、目の前に光のような存在が浮かんでいた。その形はぼんやりとしており、人間とも何とも言えない。だが、その光からは安心感のようなものが漂っていた。


「そうか……俺、死んだのか。」


記憶がぼんやりと戻ってくる。終わりのない仕事、上司からの叱責、体力が尽き果て、ついには倒れた。


「ああ、そうだ。俺は過労死したんだ。」


妙に納得してしまった。だが、不思議と恐怖や悲しみは湧いてこなかった。むしろ、肩の荷が下りたような気分だった。


「さて、次の人生について説明します。」


光の声が再び響く。


「あなたには次の世界で新たな人生を歩むチャンスが与えられます。ただし、その世界はあなたが生きていたものとは異なります。モンスターが存在し、人々がダンジョンを攻略しながら生き抜く世界です。」


「ダンジョン? モンスター? まるでゲームのようだな。」


「その通りです。そして、特別な恩恵として、あなたには一つだけ特典を与えることができます。」


「特典?」


「ええ。次の人生をより良く生きるための力や存在を選ぶことができます。強大な魔力、圧倒的な体力、もしくは珍しいスキルなど、選択肢は多岐にわたります。」


その言葉に、少しだけ胸が躍った。だが、ふと過去の自分を振り返る。どれだけ頑張っても報われない日々、孤独と疲労が重なる日常――。


「俺が欲しいのは、力じゃない。」


自分の言葉がはっきりと心に浮かんだ。


「では、何を望みますか?」


光が優しく問いかける。


「俺は……俺を全肯定してくれる存在が欲しい。」


その言葉を口にした瞬間、自分でも驚いた。だが、それこそが心からの願いだった。誰かに認められたい、癒されたいという気持ち。


「全肯定……なるほど。それは一種の伴侶や守護者という解釈でよろしいでしょうか?」


「伴侶……まあ、そんなところだ。」


「具体的な形態について希望はありますか?」


「そうだな……」


考える。心から信頼でき、頼れる存在。そして、自分を全て受け入れてくれる。


「メイドがいい。」


その言葉を選んだ理由は分からない。ただ、メイドという存在には忠誠心や支え合いの象徴のようなイメージがあった。


「分かりました。では、あなたには全肯定のメイドを転生特典として与えます。」


光の言葉とともに、周囲が急に眩しくなった。そして、意識が遠のいていく――。


「次の世界で、幸運を。」


その言葉を最後に、俺の視界は真っ暗になった。

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