第2話 14:27 1967年8月23日

自転車というのは漕ぐことが目的になるものではない。

申し訳ないがそこまで乗っていて楽しいものはないし、外から見て花があるものでもない。

サイクリングをしたいなら好きにすればいいが、断じてカッコ良くはない。

だから当然僕も漕ぐことを目的になどしていない。

ただ僕は目的地も持っていない。

仮にあったとしても今この街で営業しているのは、やる気のない個人商店ぐらいだろう。

とりあえず家に帰って、彼に旅の前祝いとして少々の荷物をやった。


14:27

太陽は嘘みたいに熱いわけではないが、青空は嘘見てに青かった。

それも少し白みのかかった上品なベタ塗りの青で。

さっきより少し重くなった体を受け止めて、彼は相変わらずの軽快さで街を走り出した。

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