(12)

「さ……さむい……」

 そして、週末。

 公益法人「北九州市霊能者互助会」とやらの代表理事が住職をやってる寺の前には、魔法少女オタクどもが抗議の為に押し掛けていた。

「表現の自由を守れ〜‼」

 シ〜ン……。

「あ……すいません、私の言った事に御唱和お願いします……」

 デモの……何と言うか司会の人が、掛け声をかけた後に困ったような顔でそう言った。

「表現の自由を守れ〜‼」

「表現の自由を守れ〜‼」

「魔法少女弾圧を許すな〜‼」

「魔法少女弾圧を許すな〜‼」

 正直……ダサい。

 以前、ニュースで観たリベラル・サヨク系のデモの掛け声の方が……はっきり言って……その……イケてる……気がする。

 でも、迂闊な事を言ったら……その……何て言うか……。

 何なんだ、この変な状況?「表現の自由を守れ」デモで「何か、このデモ、ダサいと思います」と下手に「表現の自由」を行使しようモノなら、袋叩きに合いそうな雰囲気は?

「中島……お前、いつ推し変したんだ?」

 俺は、横で、小倉の魔法少女チーム「セブン・オブ・ヘブン」のマークである北斗七星が描かれたTシャツを着てる中島に、そう言った。

「あんな中古……」

 俺は、慌てて、中島の口を塞ぐ。

「お前、誰の事を『中古』呼ばわりするつもりだった? ここには、どれだけファンが居るか判んね〜んだぞ……」

 それに対して……中島は……。

 ぞわり……。

 背筋が凍り付いた気がしたのは……この冬一番の寒波のせいだけじゃ成さそうだ……。

 中島の顔は青く……唇は紫色になっている。いや、この寒い時期にTシャツ一枚なんだから……まぁ、そうなる。

 そして、その瞳は……闇だ。怨念の闇だ……。地獄と奈落と魔界と……まぁ、そんな感じの闇だ。

 だから、俺は、土屋と付き合ってる訳じゃね〜よ。

 むしろ、面倒事を押し付けられてんだよ。

 代ってやれるものなら、代りたいよ。

 ただ、「情報の授業の成績はクソ悪い癖に、自分はネットやSNSのベテランだと思い込んでる痛い阿呆」に押し付けたら大惨事が起きそうな面倒事だから、お前に押し付ける訳にはいかないだけで……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る