(自称)現実主義者ですが、俺のせいで、推し魔法少女が悪堕ちしました。善かれと思ってやった筈なのに……?

@HasumiChouji

プロローグ

甘い人生

 多分、これは、プロレス好きを怒らせるようなニュアンスでの「プロレス」なんだろう。

 それでも、俺達に夢を与えてくれる。

 ほら……近くて見てる小さい女の子も……。

「パパ〜、ママ〜、つまんないよ〜。もう行こう」

「あ……あ……ああ……えっと……」

「あんまり、こういうの好きじゃないの?」

「好きじゃない。あたし、大きくなったら『魔法少女』じゃなくて『正義の味方』になりたぁ〜い」

 な……何だと、この糞メスガキっ‼「正義の味方」って、法律も警察も権力もガン無視する「正義の暴走」をやらかす暴徒どもじゃないかッ‼

 つい、1ヶ月前ぐらいにも……久留米と大牟田の警察署が、あいつらのせいで、続けて爆破されただろッ‼

「困ったもんだな……」

な時代になったな……」

「その齢で、んなセリフ、口にするか?」

 糞メスガキの暴言に、そうコメントしたのは……俺と、同じか少し下ぐらいの女の子と、二〇後半から三〇前半ぐらいに見える女。

 母娘おやこにしては齢が近過ぎ、姉妹にしては、齢が離れ過ぎてる……どういう関係なのか、よく判らない2人連れ……。

「サンシャイン・ブラストっ‼」

 俺の推し魔法少女であるスカーレット・サンシャインが、そう叫んで、魔法のステッキを獣人系の怪人に向けると……。

 キ〜ン……。

 えっ?

 何?

 何が起きた?

 とんでもない轟音で……耳が聞こえな……えっ?

 居ない……。

 俺が混乱してたのは、ほんの三〇秒足らずの間だったのに……スカーレット・サンシャインも、その相棒のコバルト・マリンも……怪人達も……どこかに……。

 あ……。

 ぶすぶすぶす……。

 さっきの獣人系の怪人は……このイベントが行なわれてた公園の木の根本に横たわり……その胸から黒い煙が立ち上っていた。

 少し前まで、怪人が居た場所から……4〜5mは離れてる。

 どぉんッ‼

 木が倒れる轟音で……俺は自分の聴力が回復した事を……えっ? でも、何が……起きたの……?

 あの結構太い木を、へし折るぐらいのスピードで、あの獣人は木に激突した……えっ? えっ? えっ?

「おい、このイベントの運営誰だ? すぐ責任者、呼んでこい」

 ブッ倒れてる獣人の周囲には、2人の魔法少女と、そして、他の怪人達、ついでに、さっきの女2人連れが駆け寄っていた。

 そして、女2人連れの齢下の方が首筋に手を当て、齢上の方が手首に指を当て……続いて、目を指で開いて、LEDライト付きのキーホルダーをポケットから取り出すと、光を獣人の目に当て……そして、数秒後、同時に首を横に振った。

「いくら何でも火薬の使い過ぎだろ、これ? ちゃんと事前にテストしたのか?」

 何故か……何の感情も感じられない口調だった。

「あ……あの……村山さん、大丈夫なんですか?」

あんちゃん、本名、言っちゃ駄目ッ‼」

愛莉あいりちゃんも、今、あたしの本名言ったッ‼」

「救急車は急ぎじゃなくていいぞ。その代り、警察はすぐに呼んだ方がいいな。あと、家族の連絡先を知ってるなら、すぐに連絡すべきだな。ついでに、業務上過失致死が専門の弁護士事務所にも」

「えっ?」

「見て、判んないのか?『魔法使い』系って、『気配を探る』系の魔法で、その手の事は、すぐ判るんじゃないのか?」

「え? え? え? な……何の事?」

「……だから……もうだよ……」

 魔法少女や怪人達の慌てぶりとは対照的な……淡々とした口調だった。

「いや、ここが日本で良かったな。過失致死で済む。アメリカあたりだったら重過失で2級殺人だ」

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