(自称)現実主義者ですが、俺のせいで、推し魔法少女が悪堕ちしました。善かれと思ってやった筈なのに……?

@HasumiChouji

プロローグ

甘い人生

It took some time and now I know

時間がかかったけど、ようやく判ったの


That you're the proverbial...

あんたは、いわゆる……


(Son of a bitch now)

(@#$%だって事が)


You thought you took me for a ride,boy

私を騙せたと思ったの、おバカさん?


I was only a part of your game

あんたにとって、私はゲームの駒にすぎなかった


But you're nothing more than a wise boy

けど、あんたはただの小賢こすいだけのガキ


You'll never do it again

もう二度と同じ真似は出来ないわよ


(You messed up big)

(デカい失敗だったね)


I'm gonna eat you up,spit you out

あんたを食い尽し、吐き出して、


And run you right out of this town

この町から追い出してやる


アンジー・ゴールド「Eat you up」より


だが、2人が犯した最も重い罪を罰する事は出来なかった。

その罪とは「馬鹿だった事」だ。

とは言え、陪審員が死刑の評決を出すまでに必要だった時間は、たった一四分だけだった。

マイケル・ベイ監督「ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金」より


 多分、これは、プロレス好きを怒らせるようなニュアンスでの「プロレス」なんだろう。

 それでも、俺達に夢を与えてくれる。

 ほら……近くて見てる小さい女の子も……。

「パパ〜、ママ〜、つまんないよ〜。もう行こう」

「あ……あ……ああ……えっと……」

「あんまり、こういうの好きじゃないの?」

「好きじゃない。あたし、大きくなったら『魔法少女』じゃなくて『正義の味方』になりたぁ〜い」

 な……何だと、この糞メスガキっ‼「正義の味方」って、法律も警察も権力もガン無視する「正義の暴走」をやらかす暴徒どもじゃないかッ‼

 つい、1ヶ月前ぐらいにも……久留米と大牟田の警察署が、あいつらのせいで、続けて爆破されただろッ‼

「困ったもんだな……」

な時代になったな……」

「その齢で、んなセリフ、口にするか?」

 糞メスガキの暴言に、そうコメントしたのは……俺と、同じか少し下ぐらいの女の子と、二〇後半から三〇前半ぐらいに見える女。

 母娘おやこにしては齢が近過ぎ、姉妹にしては、齢が離れ過ぎてる……どういう関係なのか、よく判らない2人連れ……。

「サンシャイン・ブラストっ‼」

 俺の推し魔法少女であるスカーレット・サンシャインが、そう叫んで、魔法のステッキを獣人系の怪人に向けると……。

 ブ〜……。

 よりにもよって、その時、携帯電話ブンコPhoneに着信音。

 クラスメイトの中島なかじまからMaeveメッセージ・アプリに連絡が来てた。

『ごめん、補修で行けないんで、写真撮っといて』

『あと、担任の福田センセが「補修への参加が任意だってのは表向きだからな」って、お前に伝えとけってさ』

 おい、ここ写真や動画の撮影NGなんだよ。

 ……と返信しようとした時……。

 キ〜ン……。

 えっ?

 何?

 何が起きた?

 とんでもない轟音で……耳が聞こえな……えっ?

 居ない……。

 俺が混乱してたのは、ほんの三〇秒足らずの間だったのに……スカーレット・サンシャインも、その相棒のコバルト・マリンも……怪人達も……どこかに……。

 あ……。

 ぶすぶすぶす……。

 さっきの獣人系の怪人は……このイベントが行なわれてた公園の木の根本に横たわり……その胸から黒い煙が立ち上っていた。

 少し前まで、怪人が居た場所から……4〜5mは離れてる。

 どぉんッ‼

 木が倒れる轟音で……俺は自分の聴力が回復した事を……えっ? でも、何が……どうなってんの……?

 あの、そこそこの太さの木を、へし折るぐらいのスピードで、あの獣人は木に激突した……えっ? えっ? えっ?

「おい、このイベントの運営誰だ? すぐに責任者を呼んでこい」

 ブッ倒れてる獣人の周囲には、2人の魔法少女と、そして、他の怪人達、ついでに、さっきの女2人連れが駆け寄っていた。

 そして、女2人連れの齢下の方が首筋に手を当て、齢上の方が手首に指を当て……続いて、目を指で開いて、俺が幼稚園ぐらいの頃にTVで放送されてた子供向けアニメに出て来た恐竜のキーホルダーを取り出す。

 その小さな恐竜の口がパカッと開くと、口の中にLEDライトが有るらしく、光が放たれる。その光を獣人の目に当て……そして、数秒後……。

「目に光を当てても反応なし」

「あと、瞳孔の散大を確認」

 そう言って、同時に首を横に振った。

「いくら何でも火薬の使い過ぎだろ、これ? ちゃんと事前にテストしたのか?」

 何故か……何の感情も感じられない口調だった。

「おい、何の嫌味だ?」

「姉さん……自意識過剰過ぎだ」

「あ……あの……村山さん、大丈夫なんですか?」

あん、本名、言っちゃ駄目ッ‼」

愛莉あいりちゃんも、今、あたしの本名言ったッ‼」

「救急車は急ぎじゃなくていいぞ。その代り、警察はすぐに呼んだ方がいいな。あと、こいつの家族の連絡先を知ってるなら、すぐに連絡すべきだな。ついでに、業務上過失致死に強い弁護士事務所にも」

「えっ?」

「えっ? 本気で言ってんのか?『魔法使い』系って、『気配を探る』系の魔法で、その手の事は、すぐ判るんじゃないのか?」

「え? え? え? な……何の事?」

「……だから……もうだよ……」

 魔法少女や怪人達の慌てぶりとは対照的な……淡々とした口調だった。

「いや、ここが日本で良かったな。過失致死で済む。北米連邦アメリカUKイギリスあたりだったら重過失で2級殺人だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る