凍える季節に想いをのせて

暗黒神ゼブラ

凍える季節に想いをのせて


私、冬月真白(ふゆつきましろ)は子供の頃は冬の季節が好きだった。

今となっては……その真逆になってしまった。

きっかけは七年前の祖父である冬月源次郎(ふゆつきげんじろう)の死

祖父は私が小学六年生の卒業式間近の一月に突然息を引き取った。

私はその年までは降り積もる雪に心躍らせ、一年に一度集まる親戚たちと遊ぶ

それを毎年楽しみにしていた。

六年生の私は子供用のキッズ携帯を持っていた。

だから祖父から毎年『あけましておめでとう。今年もよろしく』とメールが来ていた。

祖父が亡くなったあとメールを見返した時に気づいたのだが、祖父が亡くなる年のメールだけ"今年もよろしく"の部分がなかったのだ。

あの頃の私は「やったぁ今年もじいじたちと遊べる」と思っていた。

楽しみのあまりメールのことをすっかり忘れていた。

今となっては祖父自身がもうすぐ死ぬと分かっていたのかもしれないとメールを見ると思ってしまう。

倒れたと連絡あった時何かの冗談だと思いたかった

もっとたくさん一緒に居られると思っていたから……しかし運ばれた祖父は冷たくなっていた。

母は祖父の死を知った時過呼吸を起こし倒れた。

その時病院祖父の刺青を初めて見た。

これが最後になるからよく見ておくようにと言われたが気持ちが追いつかなかった。

祖父から薬物反応が出たからと解剖すると医師から言われたが理由を知っていた母だが苦しみながらも了承していた。

祖父から薬物反応が出たがそれは祖父が身体の痛み止めをたくさん飲んでいたから……その頃の私も痛みを我慢出来ず痛み止めをたくさん飲んでいたこともあるので気持ちが分かってしまう。

…………っと話が逸れてるかも、それでね祖父のことだけど…………ダメだ思い出してたら涙が止まらない。

ガラガラ

「なあなあ姉ちゃん今日の宿題で聞きたいことがあんだけどさ…………姉ちゃんなんで泣いてんの?」

あれ、どうして奏絶(かなた)が……

「ごめんね、落ち着くまでちょっと待って」

「分かった。テレビでも見ながら姉ちゃんが落ち着くまで待っとく」

六分後

「どう姉ちゃん少しは落ち着けた? もう少し待とっか?」

「大丈夫ありがとう。それで奏絶聞きたいことって何?」

その時奏絶が答えたのは……

「姉ちゃんに聞きたいことってのは、冬休みの読書感想文読んでないけど読んだ風に書くコツって何?」

分かるよ私も悩んだもんそれ……まあ私はちゃんと読んで書いたんだけど、そう思った私は

「コツとか聞くより自分でちゃんと読んで書いた方がいいんじゃない奏絶?」

と聞いたのだが

「それがめんどくさいから聞いたんだけど」

奏絶がそう言っている時テレビで映画が流れており、私は思いついた

「ねえこの映画の原作奏絶持ってたよね、それの感想書いたらいいんじゃない?」

すると奏絶は

「それな買ったはいいけどまだ読んでないんだよな……あ!! ならさこの映画の感想書きゃよくねぇか!? やっぱ俺って天才かもな!!」

この映画原作と話が違うからすぐバレると思うけど……と言いそうになったが、こういうのも経験だよね。

絶対先生に怒られると思うけど、宿題やらないよりかはいいよね。やる気はあるって思われるだろうから、多分

でもやってなかったからってやる気がないって言えないんだよねだってやる気があってもできないってパターンもあるから……まあ私がどうこう言えないかな。

そしてまあ奏絶は映画を見終わる頃には寝ちゃってまして……

「もう奏絶ったら、こんなところで寝ちゃって……宿題どうするの? 身体痛めるからせめてベットで寝よ。お姉ちゃんが連れて行ってあげるから、ほら立って行くよ」

すると奏絶はむにゃむにゃしながら

「分かった……待って……姉ちゃ〜ん……あれ? 僕何してたんだっけ?」

奏絶寝る準備完了って感じ

奏絶は起きてる時はカッコつけて一人称を"俺"に変えて口調も変えたりしてるけど眠たくなったら普段の一人称『僕』になって口調も戻るんだよね

「姉ちゃん……ベット行く前にトイレ行っていい?」

「はいはい、分かったからそこまで頑張って」

そして私は奏絶をトイレに連れて行き、その後寝室のベットに連れて行った。

「それじゃ奏絶おやすみ、また明日」

「うん、おやすみなさい。姉ちゃんもちゃんと寝てね……また明日」

そして私は寝室を出て自室に向かった。

奏絶が口調と一人称を変えるきっかけも祖父だ。

奏絶が祖父に憧れて祖父の真似をし始めた。

まあ正直に言うと……そこまで似てないけど奏絶憧れに近づくために頑張ってるからね

本当はもっと応援したい……けど、祖父が亡くなった時の奏絶の顔を忘れられない

あの時もっと私がしっかりしてなきゃいけなかったのに……私は泣いてばかりだった。

普段明るい奏絶が祖父の遺体の前で

『どうしてじいじ動かないの? ねえ母ちゃん、姉ちゃん……じいじはいつ起きるの?……ねえ、ねえ!! 起きるよね、起きるんだよね!?』と

この世界の全てに絶望したかのような顔をして私たちに聞いてきた時……私が泣くことしか出来ず母さんが倒れたので病院の人が答えた

「君のじいじはね……死んだんだよ。だから今のうちにたくさん目に焼き付けてあげて、君がじいじのことを思い出す時だけになっちゃうけどねこの世界に生き返ることが出来るんだよ(おじいちゃんのこと助けられなくて……本当にごめんね、僕がもっと……もっと的確に判断出来ていれば…………この子たちの大切な人を助けられず、こんな言葉しか伝えられない僕はなんで無力なんだ!! でもこのままで終わらせてはダメなんだ………)」

「分かった……絶対忘れないからね、じいじ」

あの頃から奏絶は祖父のようになりたいと真似をするようになった。

ガラガラ

自室に着いた私は趣味を楽しむことにした。

「さ〜てと奏絶が寝たことだし、続きを書くとしますかね。私にもじいじがよく見てた時代劇みたいなのが書けるように頑張ろっと」

そして私はペンを走らせた

チュンチュンチュン

「やばいもう朝じゃん!! さすがにもうそろそろやめないと奏絶が起きちゃう!! 今日の奏絶の朝ごはんは何作ろっかなぁ」

しかし思い浮かんで一晩中書いてたものが恋愛ものって……私誰とも付き合ったこと無いのに書いていいのかな

でもじいじなら真白の好きに書いていいぞって言ってくれるだろうから……完成したら真っ先に見せなきゃね!!

私はそう考えながらご飯を作り始めた。

コツコツコツ

「ねえ美咲(みさき)あの家知ってる?」

「知ってる知ってる……確かお父さんが亡くなったことを知った母親が自分の娘と息子を殺した後自殺したっていうあの」

「そうそう、今でもあの家その娘と息子の霊が出るらしいよ」

「ううっ、こっわ……ねえ橙子(とうこ)母親の霊は?」

「母親の霊は……人に危害を加える悪霊として退治された……みたいなことを聞いたけど、実際どうなんだろうね」

「ねえなんか怖いし早く学校行こうよ……あれ橙子? ねえ橙子どこ行ったの!? 怖がらせるにしてもやめてよ!! ねえ聞いて…………る」

「み……さき……に……げ……」

「いっいやぁぁぁぁぁ……なんで橙子……どうして、嘘よこんなの……こんなの悪い夢よ。橙子が殺される……なんて……あはははははは……そうよこれは夢、夢以外あり得ないだってまだ橙子に気持ち伝えてないもん」

プップー……キキィ……ドン!!

「やべぇ轢いちまった……どっ道路をふらふらしてるテメェが悪いんだ、そうだ俺は悪くねえ」

ブルルルル……ブォォォォン

「なっなんでだ!! なんでハンドルが動かねえんだよ!! このままじゃぶつかっちまうじゃねえかよ!!」

ブゥゥゥン……ドン!!

カチッ

「速報をお伝えします今朝桃李町(とうりまち)三丁目で四肢が切断された夏宮橙子(なつみやとうこ)さんとみられる遺体が発見されました。その付近で秋原美咲(あきはらみさき)さんとみられる遺体も発見されていることから殺人事件として調査がされているは模様です。新しく情報が入りましたらお伝えします。次のニュースです」

プツン

「俺は無事……なのか? なっなんだこれ!? どうして縛られてんだよ!!」

「あぁようやく目が覚めたのね、春日井辰弘(かすがいたつひろ)さん。私は冬月恭子(ふゆつききょうこ)……簡単に言えば幽霊ってとこね。まあこの身体は私を退治しに来た奴のを奪ったんだけど。そう怖がらないでいいのよあなたは今から父さんを蘇らせるために役に立てるのだから」

これで父さんが蘇らせることが出来るはず。

まず自らの嫌いな季節が苗字に入ってる人間の魂を捧げる。次にその季節以外が苗字が入っている人間の魂を順番捧げ四つの季節を揃えることが魂の循環を意味する

なんて馬鹿げた話……四節教(しせつきょう)とやらが話してたことを聞いたから試してるけど上手くいくのかしら?

いいえどんな方法でも可能性があるのなら試す……きっと父さんも喜んでくれる

今までの『一万人の生首を祠に奉納する』と『四百四十四人分の四肢を捧げる』って方法は上手くいかなかった

嫌いな季節が入った苗字の人間を殺すのは簡単だった……だって私の嫌いな季節って冬だから我が子を殺せばいいんだもん。父さんを蘇らせることが出来ればあの子たちだって蘇るだろうからいいよね

早くこの人の魂を捧げないとね

「やっやめろ……やめろ!! 来るな!!」

「……もう静かにして」

スパーン

よしこれで……あぁそうだこいつ"春"だ。

……まあ人間の数は多いしこれからも殺せばいいか


おしまい

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