ヒーロー側の事情5 ~屈辱と屈辱と屈辱~
この時からクラスの嫌われ者としての惨めな未来が確定したように思う。
ただ、ただ、泣き叫びながら、許しを請う事しか、僕には出来なかった。
「くぅっ!」
母さんの顔を思い出す。
まるで母さんがコイツらに馬鹿にされているようで、苦しくて、辛くて、痛かった。
「おいっ高山、オマエ、コイツのちんこ触れよっ」
僕の上に乗っかるコイツが大声で誰かを呼んだ時、天雷のような声が響き渡った。
「須藤っっ! あんた何やってんのっ?!」
お腹の上が一瞬ビクンと震える。
キミだ。
キミの声だ……。
僕の中で、必死に守ろうとした何かが音を立てて崩れ去る。
ガラガラガラッ。
どこまでも果てしなく、僕が今まで積み上げて来たものが今日、壊れた。
キミが駆けて来る。
「くぅっ……」
絶対に見られたくない姿を見られてしまった。
「き、京くんっ!」
キミの悲鳴に似た声が上がる。
何かが終わった。
僕はそう思った。
パンっ!
突然、僕の頭上で破裂音がした。
キミが須藤の頬を命一杯平手で叩いたのだ。
「サイテーっ! 須藤っ!」
「こ、琴野……だって」
須藤が慌てる。
「だってじゃないよっ! はやく京くんからどきなさいよっ! ばかっ!」
「こ、ことの……」
「あんた何様のつもりっ! いっつも私に話しかける男子達をいじめてっ!」
「だって、お、おれ、琴野と将来」
「結婚なんかするかっ! ばか!」
キミのあまりに激しい剣幕に教室中が静まりかえる。
し~ん……。
僕をガチガチに固めていた須藤の身体からスゥと力が抜けていく。
「京くんっ!」
キミは僕に乗っかる須藤を跳ね飛ばす。
ガバリ!
僕はキミに抱き上げられた。
「……」
まだ身体の小さかった僕は、姉のように大きなキミに救い出されたのだ。
「……」
僕に言葉は無かった。
キミは惨めな僕を見て笑うことはない。
その辺に投げ捨てられていた僕のパンツとズボンを拾ってくると「ほら、京くん、はやくズボンはいて。休み時間終わって先生来ちゃうよ」と、優しく告げてくれた。
群を抜いて優れた容姿を持つキミは、皆の視界から僕を遮る。
僕はキミから奪うようにしてズボンとパンツを取り戻す。
そしてそのまま逃げ出した。
ダッ!
一秒だってこの場所にいたくなかった。
守るはずのキミに逆に守られたんだ。
「惨め」というのはこういうことを言うのだろう。
もともと背も低くて、脚も遅い僕は、この日からイジメを受けるようになる。
キミはそんな僕の立場に気付くことなく、相変わらず眩しいほどの笑顔で僕に接した。
ジワリ……ジワジワ、ジジジュゥ……。
この時から、僕の中で卑屈な劣等感が確かな養分を得て根付き、育っていった。
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「ヒーロー、京一のステータス」
1、覚醒までに消費した時間 :1週間を消費
2,ヒロインの残り時間 :5.5年マイナス1週間
3,ヒロイン?母親? : (母)☆☆☆☆☆0★★☆☆☆(ヒロイン)
4,Mっ気 :レベル1→2へ上昇
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