猫又ハイジャック!

yolu(ヨル)

『デコメロンパンを販売している、有名ZEROTuberであり、元アイドルのTAIGAさんキッチンカーが、猫又たちに占拠され──』


 食べていたコンビニメロンパンが、ぽろりと私の手から落ちる。


「あら、3匹の猫又、珍しいわね〜。……あ、うちの猫又に似てる、由亜ちゃん、みて! ほらー、ハチワレと、茶色のふわふわと、グレーのふわふわ! 由亜ちゃん、うちの猫又、帰ってきてないわよね? 猫又集会、長引いてるのね、年末だし〜」


 のんきな母の言葉に、私は固まった。


 どこをどう見ても、あれは、うちの猫又だ。

 私が手作りした首輪をしているじゃあないか!


 言いたかったが、言い出せない。

 なぜなら、朝食の時間なのに、目の前に父が座ったからだ。


「……お前、もう12月だぞ? 高校3年なの、忘れてないか? ん? フリーターするのか? ん?」


 進学はしないと早々に決めていたが、就職するにしても選り好みすぎだと、朝から説教が始まった。

 甘いメロンパンが、一気に苦くなる。


 それこそ私の夢は、メロンパンの商品開発!

 しかし現実はメロンパンのように甘くはない。

 先生から薦められた就職先は、食品開発部門がある会社だったけれど、そうじゃない。


 私は、メロンパンの商品開発がしたい!

 自分で作って売る、わけではなく、開発した商品を売ってもらいたいっ!


『TAIGAさんのキッチンカーの前には、女性客がズラリと! メロンパンも人気ですが、今は猫又の人気もあり、信徒になりたいという女性もい』


「この際、パン屋にでも、就職したらどうだ」

「……うん」


 ──よし、決めた。


「現地で、メロンパン、視察してくるっ! キッチンカーなら企業できるかも。うちの猫又もいるしね!」


 私は制服姿で、家を飛び出した。手には学生鞄を引っ掴んで。

 親の声など、大無視だ。


 まずは、飛行場に。


 北海道から東京だけど、どうにかなる! 多分!!!

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