元カノと元々カノと元々々カノが誕生日に俺の家に来て延々と修羅場ってる
剃り残し@コミカライズ連載開始
第1話
25年前の2月22日に俺は産声を上げた。最後に誕生日を祝ってもらったのは3年前。学生時代の彼女に祝ってもらった。
それからは社会人となり、誕生日のみならずクリスマスや年末年始なんかのありとあらゆる季節イベントを一人で過ごしている。そんなわけで一人の誕生日ももう慣れた。
ゆっくりと午後から活動を始め、都内から遠方に住む両親や妹からの『おめでとうライン』に返信をして家でゴロゴロしているとあっという間に夕方になっていた。
時計を見ると午後6時半。出生時刻は18時47分と教えられたので、あと少しで正真正銘の25歳となる。
そんなタイミングでマンションのエントランスからの呼び出し音が鳴った。
特に来客の予定もネット通販の配達の予定もないはず。不思議に思いながらインターホンで呼び出し主の顔を確認する。
そこに立っていたのは俺のよく知っている人。最後に見たのは3年前。それからパッタリと連絡を取らなくなり見たきりだったが、ショート寄りのボブだった当時よりも髪の毛が伸びてセミロングの巻紙で整えられていた。
大学の一つ下の後輩、
そんなことがインターホン越しに分かるくらいに、彼女は洗練されていた。
手を震わせながら通話ボタンを押す。
「は……はい……」
カメラ越しに結羽が微笑む。
「やっほ。先輩、久しぶり」
懐かしい声のトーンもそうだし、俺がここに住んでいると分かったうえで来ているようだ。
「ゆ……結羽……だよな?」
「ん。そうだよ。会いに来た」
「な……前触れもなく急に? 事前に連絡くらいしてくれてもいいだろ」
「や、誕生日でしょ? 今日。家にいないってことは誰か祝ってくれる人がいるってことだし、家にいるってことはそんな人は居ない。読みが当たったね。ってか早く開けてよ。ここ、寒い」
結羽が外の方を凝視しながらそう言う。今日は雪は振らないものの氷点下近い寒さになると予報で言っていたので、外はかなり冷えるんだろう。
「あ……あぁ。そうだよな。ごめん」
解錠ボタンを押して、エントランスの中へ結羽を招き入れる。
結羽とは3年ぶりに再会する。しかもわざわざ誕生日に家にまで来てくれるなんて、これは何かあるんじゃないかと、心がざわつきながら部屋までやってくるのを待つ。
すると、またインターホンから呼び出し音が鳴った。映像を見ると、知らない女性が立っていた。金髪ボブのスラッとした人。右目の泣きぼくろやパンク寄りのファッションに心当たりのある人はいるが、ここに来る人ではない。
「はい」
「どうも」
その特徴的なハスキーボイスでピンとくる。高校時代に付き合っていた
「ど、どちら様でしょうか?」
「アオノリよ、アオノリ。忘れたの?」
「……忘れるわけないだろ」
「そうよね。開けてよ。寒いの」
蒼乃莉は結羽と同じように外の方を凝視しながら言う。雪でも降っているんだろうか。
「あー……い、今から?」
「今からよ。何? このまま外で待たせる気?」
「い、今は先客が……」
「彼女?」
蒼乃莉が眉間にシワを寄せて尋ねてくる。
「いや……そういうのじゃ……」
「じゃ、開け――あ、開いた。部屋番号は分かるから行くわね」
「あ、ちょ――」
中から配達業者の人が出てきたタイミングでオートロックのドアが開いたようだ。プツン、とインターホンの映像が切れる。これはとんでもない事になってしまった。
恐らく、数分後には元カノと元々カノが俺の部屋で鉢合わせる。
頭を抱えていると、またしてもインターホンの呼び出し音が鳴る。立っていたのはまたしても美女。見覚えのないダッフルコートを着ていた。
もうこうなればどうにでもなれ。身分を明かす間も与えずに扉を開ける。
「用があるならどうぞ」
俺はそれだけ言って誰なのかもわからない人を招き入れた。
◆
「で……この人たちは誰?」
俺の目の前には美女が3人。その中で俺から向かって右に座っている結羽が2人をじろりと睨みつける。
真ん中に座っているのは蒼乃莉、そして左に座っているのは――
「
沙耶は「そうだよ」と言って笑顔で頷く。
つまり、今ここには大学生の時の彼女の結羽、高校生の時の彼女の蒼乃莉、中学生の時の彼女の沙耶がいる。つまり、元カノ、元々カノ、元々々カノが集合していることになる。
話を進めたいのか、結羽が手を挙げて「はい」と言い話し始めることを表明する。
「私、
結羽の言葉を受けて蒼乃莉と沙耶も「私も」と言って手を挙げた。
三人が首を傾げて一瞬だけ考え込む。そして、自分の立場を理解した瞬間、3本の鋭い矛先が俺の方を向いた。
「「「……浮気してた?」」」
「違うぞ!? ちゃんと期間は開いてるからな!?」
外では雪が降るか降らないかの瀬戸際にある25歳の誕生日、何故だか俺の部屋に3人の元カノが集合してしまった。
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