ええ!プロジェクト炎上中なのにPM離任ですって!?
@samayouyoroi
IT方面
唐突な依頼
「……ええ、それは構いませんが……」
福嶋は呆然としたまま通話相手にそう答えた。依頼の前段の話があまりにも現実味を欠き過ぎていてそうとしか答えられなかったのだ。
──では宜しくお願いします。以降の対応はこちらで行いますのでご安心下さい
通話相手は無感情にそう言った。
「あ、あの」
福嶋は呆然としたままある事を問いかけた。
──何か
相手はまるでAIのように無感情に問い返してきた。
「その、期間はどれ程でしょう? それによって理由も考えないと……」
福嶋は恐るおそる、だが当然の質問をした。
──最低でも年内はお願いします
通話相手はさらりととんでもない事を言った。
「年内?約二ヶ月もですか?」
福嶋は驚きの声音でそう尋ねた。
──八週間程ですね。それと産休ないし類似する理由は止めて下さい
通話相手は更に条件を詰めてきた。
「は、はい。ですがその、それだけの休職、いや離職となると……」
福嶋は失礼にならないように注意してそう言った。ITデベロッパーの社員が二ヶ月も会社を離れるというのは滅多にあるものではない。
全く間が悪い話だった。これが去年までならリモートワークという形で姿を隠す事などいくらでもできた。だが政府により新型コロナウイルスが五類に格下げされたことによりコロナ禍はなし崩し的に終息したような形になってしまったのだ。
コロナ禍の終息によりリモートワーク割合低減に躍起になったのは福嶋自身である。リモートワークなど設備費がかさむだけで何のメリットもないからだ。下請けの技術者ならともかくグループの社員が引きこもりになっても困るという理由もあった。
──もし長引くようなら転属も考えます
相手はさらりとそう言った。
「は、はあ……」
さらに唐突な言葉に福嶋はそうとしか答えられなかった。
──では、宜しくお願いします
そう言って相手は電話を切ってしまった。
「…………」
福嶋は通話が切れた後も受話器を持ったまましばらく呆然としていた。
通話相手の依頼自体も結構な内容だが、その前段の話がとんでもなさ過ぎて福嶋から思考力を奪っていた。これって、どうなるんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます