第17話

「にしても、篤が専務だなんて」



そう笑う滝沢斗希の言葉に、

川邊専務は、何処か恥ずかしそうに顔を赤らめている。



「うっせぇ。

秘書迄付いて、落ち着かねぇ」



そう言って、突然川邊専務に視線を向けられ、私は戸惑い笑顔を浮かべる事しか出来ない。



「秘書かぁ。

篤、くれぐれも手なんか出すなよ。

最近は、不倫問題は社会的に風当たりが強いから」



そう笑いながら川邊専務に滝沢斗希は話しているけど、

それは、私に対しての牽制なのだと気付いた。



きっとこの男は、眞山社長に近付いたように、

私が川邊専務にも近付くと思っているのかもしれない。



「手なんか出すかよ。

浮気したら梢(こずえ)に殺されるからな」



その川邊専務が口にした、梢という名前は。



川邊専務の、奥さんの名前なのだろう。



川邊専務のその奥さんも、元々はこの会社の社員だったと聞いた事がある。



川邊専務の子供を妊娠し結婚して、

産休と育休を取り、またこの会社に復職するはずだったと。



だけど、その育休中に二人目の妊娠が分かり、

そのまま退職したのだと聞いた。



噂でしか知らないが、川邊専務のその奥さんは、とても美人な人らしい。

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