第2話


きっと、私は色々と恵まれているのだと思う。



母親のコネで、大手の企業に就職出来て。



優しい彼氏が、居て。



容姿も、褒められる事が多くて。



なのに、幸せだと感じない。




「眞山社長、おはようございます」



隣に居る5年先輩の神山咲(かみやまさき)さんと同じように、

私も椅子から立ち上がり、同じ台詞を口にする。



そう。



私と神山さんは、この大手おもちゃ会社ベリトイの受付嬢。




ベリトイの社長である眞山綾知(まやまあやとも)さんは、

エントランスの受付に居る私達に軽く会釈すると、

エレベーターホールへと行く。



そうやって挨拶を返してくれたのは、

眞山社長だけではなく、彼と一緒に居た社長秘書の奥村美帆子(おくむらみほこ)さんも。



「今日の奥村さん、髪型アップにしてて、いつも以上に可愛いかったな」



神山さんは椅子に腰を下ろすと、

そう呟やいていた。



「ですよね…」



私も先程見た、奥村さんの姿を思い出した。



聞いた所によると、年齢は30代前半らしいのだけど、童顔だからか、20代半ばにしか見えなくて。



とにかく、可愛い。



「あれで、子供中学生って凄いよね?」



神山さんの言うように、奥村さんには子供が居て、中学生らしい。



そして、シングルマザー。



その辺りの事情は、詳しくは知らないけど。




「奥村さん、眞山社長と最近毎朝一緒に出社してるけど、

絶対、そうだろうね?」



神山さんの言うように、私もそうだと思う。



その、"そう"の意味は。



あの2人は付き合っている…。



付き合ってなくても、男と女の関係だと。



もう何年も奥村さんは、眞山社長の秘書の一人らしいけど。



ここ最近、朝もそうやって、秘書である奥村さんが眞山社長を迎えに行って、一緒に出社して来る。



いや、もしかしたら、夜を共にして、一緒に出社してるだけかもしれないけど。



だからか、以前から二人の関係を怪しむ噂が社内には色々あるけど。



最近、特にその噂の信憑性が増している。

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