第2話
◇
きっと、私は色々と恵まれているのだと思う。
母親のコネで、大手の企業に就職出来て。
優しい彼氏が、居て。
容姿も、褒められる事が多くて。
なのに、幸せだと感じない。
「眞山社長、おはようございます」
隣に居る5年先輩の神山咲(かみやまさき)さんと同じように、
私も椅子から立ち上がり、同じ台詞を口にする。
そう。
私と神山さんは、この大手おもちゃ会社ベリトイの受付嬢。
ベリトイの社長である眞山綾知(まやまあやとも)さんは、
エントランスの受付に居る私達に軽く会釈すると、
エレベーターホールへと行く。
そうやって挨拶を返してくれたのは、
眞山社長だけではなく、彼と一緒に居た社長秘書の奥村美帆子(おくむらみほこ)さんも。
「今日の奥村さん、髪型アップにしてて、いつも以上に可愛いかったな」
神山さんは椅子に腰を下ろすと、
そう呟やいていた。
「ですよね…」
私も先程見た、奥村さんの姿を思い出した。
聞いた所によると、年齢は30代前半らしいのだけど、童顔だからか、20代半ばにしか見えなくて。
とにかく、可愛い。
「あれで、子供中学生って凄いよね?」
神山さんの言うように、奥村さんには子供が居て、中学生らしい。
そして、シングルマザー。
その辺りの事情は、詳しくは知らないけど。
「奥村さん、眞山社長と最近毎朝一緒に出社してるけど、
絶対、そうだろうね?」
神山さんの言うように、私もそうだと思う。
その、"そう"の意味は。
あの2人は付き合っている…。
付き合ってなくても、男と女の関係だと。
もう何年も奥村さんは、眞山社長の秘書の一人らしいけど。
ここ最近、朝もそうやって、秘書である奥村さんが眞山社長を迎えに行って、一緒に出社して来る。
いや、もしかしたら、夜を共にして、一緒に出社してるだけかもしれないけど。
だからか、以前から二人の関係を怪しむ噂が社内には色々あるけど。
最近、特にその噂の信憑性が増している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます