第1篇: 遥かなる旅路(中編)
▢▢▢ 未知との遭遇 ▢▢▢
目が覚めた二人は、目の前に広がる広大な原野に圧倒された。空は鮮やかな青で、地平線には無数の巨木がそびえ立っている。微風に乗って運ばれてくる草の香り、鳥のさえずり、遠くから響く動物の咆哮――それらは現代では決して味わえないほどの自然そのものだった。
「これ……本当に旧石器時代なの?」詩織が周囲を見渡しながらつぶやいた。
「間違いない。この空気、この光景、そして……」光輝は足元の地面に埋もれる石器を指差した。「これを見てくれ。間違いなく旧石器時代の遺物だ。」
詩織がその石器を手に取ると、タカミムスヒが声を上げた。「おー!これはかなり古いね!しかも、ちゃんと人の手で作られてる。ボク、ワクワクしてきた!」
「タカミムスヒ、ここがどんな場所かもっと解析できるか?」光輝が尋ねる。
タカミムスヒの目が一瞬青く光り、ピッという電子音を立てた後、人工的な声で答えた。「解析開始……周囲の環境をスキャン中……完了。このあたり、約3万年前の遺跡として有名な場所だよ。現代と比べると、自然がそのまま残っていて、人の手がほとんど入っていないね。」」
「現代の遺跡が、今の私たちの足元にあるというわけね……。」詩織は驚きを隠せなかった。
▢▢▢ 移動民族との出会い ▢▢▢
二人が歩みを進めると、遠くから人影が近づいてくるのが見えた。彼らは槍や石器を持ち、動物の皮をまとっていた。緊張感が走る中、光輝は両手を挙げて敵意がないことを示した。
タカミムスヒが素早く光輝に耳打ちするように言った。「ボクが言葉を翻訳するよ!君たちは普通に話してみて!」
タカミムスヒが即座に反応した。「翻訳モード起動……発話中……」
「私たちは敵ではありません!話をさせてください!」光輝が言うと、その言葉が古代の言語に変換され、相手に伝わった。
リーダーらしき青年が慎重に近づいてきた。鋭い目つきと引き締まった体格を持つ彼は、光輝と詩織を観察するように見つめていた。
「お前たちは何者だ?」彼の声は低く威厳があった。それを聞いたタカミムスヒが即座に翻訳し、光輝と詩織に伝えた。
詩織が冷静に応えた。「私たちは遠くの土地から来た旅人です。あなたたちに害を加えるつもりはありません。」
青年は少し考えた後、槍を下ろした。「遠くの土地だと?この地にそんな話を信じる者はいないが……お前たちの話を聞こう。」
▢▢▢ 集落での試練 ▢▢▢
彼らは移動民族の集落へと案内された。そこでは家族が火を囲み、狩猟や採集で得た食材を調理していた。生活は質素ながらも秩序があり、人々は自然と共存しているようだった。
「ここは私たちの家族が守る土地だ。だが、外部から来た者がここにいる理由を証明する必要がある。」リーダーの青年、カナメが言った。
「理由を証明?」光輝が眉をひそめる。
「そうだ。この山を越え、頂上にある神聖な石を持ち帰って来い。それができれば、お前たちの話を信じよう。」
詩織が不安そうに光輝を見つめた。「この試練、かなり危険そうね。」
「でも、やるしかないさ。この地で何かを学ぶためには。」光輝は決意を込めて頷いた。
▢▢▢ 星辰の羅針盤の導き ▢▢▢
二人は「星辰の羅針盤」を手に山を登り始めた。羅針盤は天体の動きを示すように輝き、彼らを正しい道へと導いていく。しかし、道中には予期せぬ困難が待ち受けていた。
「詩織、見てくれ。この足跡、かなり大きい。」光輝が地面を指差した。
「これって、熊かしら……?」詩織の声が震える。
そのとき、茂みから低いうなり声が響いた。二人が振り返ると、巨大な毛むくじゃらの獣が姿を現した。
「危ない!」光輝は咄嗟(とっさ)に詩織をかばい、羅針盤を掲げた。羅針盤は再び光を放ち、獣が怯(ひる)むように一瞬動きを止めた。
「これが、羅針盤の力……?」詩織は驚きの表情を浮かべた。
▢▢▢ 次回予告 ▢▢▢
試練を乗り越える中で明らかになる、移動民族と「星辰の羅針盤」に隠された秘密。次回、二人はついにこの世界での使命を知る――新たな冒険が始まる!
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