第12話。最凶
『ケイト』
「揃ったな」
『クリムゾン』
「あぁ。…やれ」
『カノン』
「……………わかったの」
『?????』
カノンは機械的に了承し、
…「実験」は始まる。
カノンはその場で虚空に手を伸ばす。
『カノン』
「……………」
『クリムゾン』
「遅い」
『カノン』
「待って……捕まらない……」
『クリムゾン』
「チッ、…、……、」
『カノン』
「……………」
『クリムゾン』
「遅いってんだよ愚図があっ!?」
『?????』
言うか早いか、クリムゾンは思い切りカノンの
頭を上段蹴りする。
手加減無しの一撃に、カノンはその場から
吹っ飛んで地面を転げ回った。
そして無様に呻く。
『カノン』
「う、うぅ、…。ひど、い、っっ、」
『クリムゾン』
「何が酷いか愚図がぁ。世界にはお前よりも
もっともっと苦しんでいる者達が沢山
…本当に沢山いるのだぞ?それが何だ?
たかがこの程度で酷い、と。甘えるな。
やれ」
『カノン』
「っっ…!、…、ぅ、」
『クリムゾン』
「やれってんだよぉ!!」
『カノン』
「……わかった、の。」
『クリムゾン』
「…チッ」
『?????』
カノンは苦しく呻きながらも起き上がり、
再度虚空に手を伸ばした。
今度は、真名も直ぐ掴めた。
『カノン』
「……!」
『?????』
ガチン!と廃棄場のゴミの一部から金属音が
聞こえる。何か小さな物がぶつかったのであろう
気配が、そこにはあった。
…それに、クリムゾンは不満げに応じる。
『クリムゾン』
「…それだけぇ?この間のようにやれよ
大きいものは時間かけてやらないとダメとか
そういうの無しなぁ」
『カノン』
「…、…、待っ」
『クリムゾン』
「待つか!二度目!」
『カノン』
『…!、…、…わかったの』
『?????』
夜明けまで終わらないだろうとカノンは思って
落胆していた。
何が、「白」なのだろう。
何が、「正義」なのだろう。
何を、見えない所ばかりでこんなに頑張っている
んだろう、わたしは。
カノンはそんなことばかり思っていた。
早く地球を救ってほしいな。
早く地球を滅ぼしてほしいな。
そうすれば早く、
白魔導士も黒魔導士も要らなくなるのにな。
そこまで思うと、カノンの力の行使に、迷いが
混ざってくる。
それに勘づいたクリムゾンは苛々しながら
ケイトと会話する。
『クリムゾン』
「おいケイト。今日は特に調子悪いじゃねぇの」
『ケイト』
「私は言ったはず。黒魔導士の戦闘で首が
薄皮一枚かろうじて繋がっていたと」
『クリムゾン』
「拙者は冗談だろうと思ってよ」
『ケイト』
「私の【
『クリムゾン』
「それもそうだった」
『ケイト』
「おいおい」
『?????』
苦しげなカノンをよそに、上司二人組は、
歓談に華を咲かせていた。
カノンは、
…わたしも、力の事を晒せる、人が居たなら。
……そんな存在を、なんて呼ぶんだっけ?
そのように泣きそうになりながら想いを巡らせて
それでも真名を掴もうとするのは辞めなかった。
『クリムゾン』
「…はぁ、しかし時間喰うんだよなこれさぁ。
どうだケイト、さっきカフェにも行ったが
終わったら拙者の行きつけのバーに
行くってのは」
『ケイト』
「私はいいが…夜明けまでやるだろうよ。
空いているのか、まず」
『クリムゾン』
「こじ開ける」
『ケイト』
「呑むのは?」
『クリムゾン』
「スピリタス。ケイトがね」
『ケイト』
「…【
『クリムゾン』
「気が向いたらやるよ」
『ケイト』
「…はあ。それでも私は紅凛と一緒に居られる
のであればそれでいいのだけれどな」
『クリムゾン』
「コードネームで呼べ【
頭蓋骨かち割るぞ」
『ケイト』
「本気ならやめてくれ直すから」
『クリムゾン』
「ならいいよ」
『ケイト』
「助かった…」
『?????』
と、
違和感。
『ケイト』
「?」
『クリムゾン』
「どうしたケイト」
『ケイト』
「いや…何ていうのか」
『クリムゾン』
「あぁ?」
『ケイト』
「形容するのが難しいんだが…うーん…」
『クリムゾン』
「早く言えよ苛々する」
『ケイト』
「じゃあ言う。…こんなに深夜って、昏かった
かな、って」
『僕』
乱入する。
「やっと気づいたよボンクラどもが」
『ケイト』『クリムゾン』
「!?」
『僕』
おっそいわ!
「【廻り巡る時間の下に昏い宵が染み渡る。
時は丑三つ時に近い。鬼が出るか蛇が出るか
さあさあ百鬼夜行の準備から始めよう!
今度は詠唱をしっかり行えた。
対象を指定出来る。それはカノン以外。
ケイトとクリムゾンの周りだけ視界不良になる
のを確認すると、今度はカノンに向かって
全力疾走。
『カノン』
「えっ!?」
『僕』
僕はカノンを背にして詠唱準備。
そして、最短詠唱。
「【ただ我が敵を蹴散らせ!
居るとおぼしき空間に吸い込まれていく。
やった。致命傷にはならなくても、これなら
どちらかは倒せているだろう。
あとは、僕は、カノンを……………、
『ケイト』
「【つまらない。傑作を期待したのにこの程度
なのか。そうか。なら引き直しはしない。
用意したぶんだけで勝負して帰るさ。
『僕』
「!?」
なっ、
僕の攻撃は、立ち消えていた。
、
、
、
何だ?何でだ?準備してたのは明白だったが。
代償無しで、無効化?
何を、した?
『ケイト』
「まあ分かんないだろうな、この魔術の出来た
心境なんて。私は
名は体を表すとも言うが、そうでもない時も
あったのだよ」
「計画通りにいかない時があった」
「金だけはどんどん減っていった」
「それでも負けていられなくて賭けは続けた」
「勝ちとは何か」
「それすらも掴めないままにな」
…そして詠唱。
最短詠唱。
「【道連れだ。
『?????』
刹那。
ドンッッッ!!!
ケイト・クリムゾン・カノン・黒ローブの少年の
いる空間が、総て爆ぜた。
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