第8話。取るに足らないくらいの
『?????』
時は過ぎ、夜が訪れた。
カノンは一人、夜道を歩いていた。
何だか手持ち無沙汰で、散歩に出かけていた。
『カノン』
「…暇なの」
『?????』
カノンは無意味な独り言だと解っていても、
そう呟かずには居られなかった。
何だか、とても寂しかったのだ。
『カノン』
「………………」
『?????』
カノンはふと首をさすった。
違和感。まるで授業で雑に布を縫合したような。
そして、昨日のミーのパジャマパーティ前の
動揺の言葉。
「ずっとめざめないから、しんぱいで」
『カノン』
「助けて、くれたんだね」
「でも、なんでカノンは「けんたい」になって
ないの?」
「そしてその前にどうしてカノンは生きたまま
なんだろう……」
『ーーーーー』
「相変わらず頭の中お花畑だねぇ、おめぇは」
『?????』
背後から聞こえる声にカノンは振り向く。
そこにはとても背の高い女性が腕組みをして
立っていた。
カノンはその背の高い女性に声を返す。
『カノン』
「今晩は。どうしたの、
『ーーーーー』
「コードネームの「クリムゾン」と呼べ馬鹿者」
『?????』
背の高い女性…クリムゾンはカノンの言葉に
深い溜息をつき、それでも言葉を並べていく。
『クリムゾン』
「おめぇの失礼な所はそこだよなぁ。拙者が
恥ずかし…カッコつかない所をいつも突いて
くる。いつも腹立たしいよホントぉ」
『カノン』
「恥ずかしいと思わず気にしない事に
できないかな?」
『クリムゾン』
「本当の馬鹿だねおめぇ」
『カノン』
「自覚ないから、へいき」
『クリムゾン』
「胸を張るな、つるぺた」
『カノン』
「まだ成長期だから、へいき」
『?????』
また、クリムゾンは深く嘆息する。
が、すぐさまカノンに向き直り、厳しく冷たい
視線を向ける。
告げる。
『クリムゾン』
「白魔導士、カノン。
コードネーム「イノセンス」。
本日は上司である拙者、クリムゾンと
後ほど合流するケイトの指導の元、
「詠唱破棄」の「実験」を執り行う。
…傷物同然の体の所悪いが、夜明け迄、な」
「返事は、決まってるよなぁ?なぁ?」
『?????』
カノンは、一言だけ返した。
『カノン』
「わかったの」
******
『カノン』
「家族は自我を得たときからいなかった」
「親戚もカノンからは離れていって、
カノンは本当に一人になっていた」
「このままでは生きていけない」
「でも、カノンはとても贅沢なお願いを
ただひたすら夜空に願っていた」
「お金はなくても良い」
「家もボロボロで構わない」
「毎日、少しでも美味しい三食のご飯と、
カノンに、…、
構ってくれる人が欲しい」
「何故か誰もカノンを助けようとしなかったの」
「どれだけ風体がボロボロで」
「どれ程ボロボロと泣き叫んでも」
「どうしようもなく、世間は冷たかったの」
「誰でもいいから」
「…助けて」
カノンはそして、「白魔導士」とであったの。
『クリムゾン』
「生きる力が欲しいのかぁ?」
『カノン』
「……………」
『クリムゾン』
「丁度いい。人手はたくさん欲しい、だがなぁ」
『カノン』
「……………」
『クリムゾン』
「…「働かざる者食うべからず」。今から拙者
はとある仕事に出る。それに役に立て。
やり方は教えながらでいいから、それでも、
やれ。
出来ないのなら、今すぐここで首を刎ねる」
『カノン』
「…わかったの、
……………やる。」
たぶん、カノンは力はあるけど、とても嫌な人に
助けられたんだと悟ったの。でも、カノンは
それでも縋ったの。
カノンの取るに足りないくらいの、ココロは。
誰も観てくれない生命の輝きよりも、
どうしようもなく、救われたがっていたから。
******
『僕』
「……ハァ、ハァ、ハァッ……」
僕は、走っていた。目的地は、例の廃棄場。
全く見当違いでないだろう。あそこなら「何が」
起こっても、立つ鳥跡を濁さずで、後片付けは
容易だから。
それよりも。
「……何やっているんだろうな僕は…ッッ!」
たかが【
たかが「白魔導士」と言う組織の中の、末端。
たかが、いち女子高生。
「……はあっ、」
たかが、赤の他人。
それにコロシアイが付随しただけ。
それが、僕と夕霧カノンの本来の関係性だ。
「……はあっ!」
それが、なんで。
『カノン』
「……うぇ、」
泣くなよ。
独りでなんて。
…僕が、居るのに。
同情なんて欠片ほどもしてないのに。
どうしようもなく放っておけなくなったんだ!
******
『?????』
とある、廃棄場。
黒ローブの少年はとてつもなく荒い息遣いの中、
何とか此処に辿り着いた。
『僕』
「はあ!、あァッ!、…ぐええ…」
着いた。
着いた…が…。
「誰も…居ない…」
まさかの、肩透かし?
そんな。
「それはねえだろうよ…」
ドサリ、僕は地面に全身を投げ出して、
宙を仰いだ。綺麗な、夜空だった。
『カノン』
「今日は、月が綺麗だね?」
『僕』
ああ。
とても綺麗だな。
そう、応えたかった。
…「本気」を演じるのはとても難しい。
コロシアイの中で手加減するのは、上司共に
嫌なほど目に付くから。
(カノンはそれすら楽しんでいた節があるが)
「…どうしようもないな」
どれだけ「本気」なんだろう。この、感情。
僕は、カノンを……………、
僕は、夜空に願っていた。
「どうしようもなく、世間は冷たい。
それでも。でも僕以外にも、誰でも構わない。
夕霧カノンを助け、」
『ーーー』
「【あーあまた賭けに負けた、負けちまった。
この憤りはどこにぶつければいい?人に
ぶつけたいな、そうだな、目立たないように
背後から一発だけ怒りをぶつけようか!
記憶なくなるくらいの大花火でなあ?
『?????』
……ッ、ドンッッ!!、…。
爆散。
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