ゴリラ、シルバーウィークを迎える
第56房 静岡県へ🍯🐻
9月14日(金)
時刻【8時00分】
天気【快晴 最低気温25℃ 最高気温30℃】
大手電機メーカー桃上のシルバーウィーク初日。
さまざまな花が咲き誇る自然豊かな静岡県駿東郡◯◯町のとある養蜂場。
ゴリラはここにいた。
その格好は真夏だというのに、真っ白の帽子に面布を被り、手にも真っ白なゴム手袋を嵌めている。
服装も真っ白の長袖の作業着、靴も真っ白の長靴だ。
ゴリラはミツバチが飛び交う巣箱の前で気合いを入れる。
だが、1人いや、1ゴリラではない。
工程管理課で彼と双璧をなすサラサラな髪が特徴の佐久間熊主任が一緒だ。
実はこの養蜂場。
熊主任の実家が営む養蜂場なのである。
ゴリラがここに来たのは、バナ友である熊主任との仲を深める為。
その気持ちを会社内のカフェスペースで熊主任が小耳に挟んだことにより、ゴリラに声を掛け、遊びに来るという運びになったのだ。
「それではゴリラ主任! こちらにどうぞ」
熊主任は慣れた手つきで燻煙器をミツバチが飛び交う巣箱に差し込み、ハチたちが大人しくなった瞬間を見計らって、丁寧に素早く巣枠を取り出す。
その流れのまま、腰にぶら下げていた蜂ブラシを使用し巣枠についているミツハチを優しく落とし、同じく腰にぶら下げていたナイフで蜜ブタを切り取る。
切り取った蜜ブタはミツロウなどに加工できる為、巣箱の横に置いていた樹脂製のトレイに乗せていく。
そして、その反対側に準備していた遠心分離器へと巣枠をセットした。
一方、熊主任の呼びかけに応じて近くにきたゴリラは、言われた通りの格好をしたというのに、自身の顔に群がってくるミツバチたちに戸惑っていた。
だが、これは当たり前のことだった。
何故なら、彼はゴリラ。
人間とは違い、顔も真っ黒だからだ。
「ウホ、ウホウホ!」
「ふふっ、大丈夫ですよ。ゴリラ主任。そんなに慌てなくても私のミツバチたちは襲いませんので」
「ウホウホー?」
「はい、ですので、燻煙器を顔の近くで持っていて下さい。これで大人しくなるはずです」
その場であたふたしているゴリラに熊主任は、自身の持っていた燻煙器を手渡し、それを受け取ったゴリラは言われた通り、顔のすぐそばまで持っていく。
すると、ミツバチたちは大人しくなり、巣箱へと戻っていった。
「ウホウホ!」
ゴリラは熊主任の言った通りなったことに目を輝かせる。
「そうなんですよ。ハチと言っても、私の養蜂場にいるミツバチはとても温和な性格で可愛いんですよね。この子たちはセイヨウミツバチですが、二ホンミツバチもいますよ」
嬉しそうにミツバチのことを語る熊主任を目の当たりにして、微笑むゴリラ。
彼はまたバナ友の新たな一面を知れたこと嬉しかったのだ。
「では、ゴリラ主任。出番ですよ。遠心分離機を一定の速度で回転させて下さい。力いっぱいやればいいということではありませんからね。優しくもしっかり回して下さい」
「ウホウホ」
ゴリラは、慎重に遠心分離機を回す。
1回、2回、3回……と。
そして、10回を超えたところで熊主任の声が響いた。
「これくらいで十分だと思います。ありがとうございます」
「ウホ、ウホウホ!」
「いえいえ、わざわざお休みの日にこんな田舎まで来ていただき嬉しい限りですよ」
「ウホ?」
「邪魔だなんて、全くないですよ。私の母も父もゴリラ主任が来てくれて喜んでいますから」
「ウホー!」
「はい! ですので、少しの間ですが、ゆっくりしていって下さい」
「ウホウホ」
「あ、そうだ! せっかくなので、採れたてのハチミツを食べてみませんか?」
「ウ、ウホ?!」
「はい、手伝って頂いたので、そのお礼とでも思って下さい」
熊主任は、そう言うと分離器のバルブを開けた。
バルブから、ねっとりと濃厚で黄金色をしたハチミツが出てくる。
そのハチミツを受ける為、下には金属製の蜜濾し器と、ろ過したハチミツを採取する樹脂製の容器がある。
「ろ過したものがいいですか?」
「ウホウホ!」
「そうですね! ろ過していないハチミツの方が個人的には好きですかね。色んな風味があっていいんですよ!」
「ウホ……ウホウホ!」
「わかりました! でしたら、ろ過していないハチミツを用意しますね。少々お待ち下さい」
熊主任は、開けていたバルブを閉めて急ぎ足で養蜂場の手前にあるビニールハウスへと向かっていた。
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