反省の色はありません。あとで説教な。

「まぁ用意しているは嘘だけど、明日くらいには描いてほしいって仕様書出すから」

「し、しようしょ?」


 おっと、業界用語だったか。

 簡単に言えば指示書。クリエイターへクライアント側から『こうしてください』っていう依頼内容をまとめたもので、クライアントとクリエイターが共通認識とするための指示書である。別名は発注書。


 発注書は請求書ともセットだ。


「こう描いてくれ~って感じの指示を出すから」

「あ、うん、わかった……自信ないけど頑張るよ……」


 これを機に自信をつけてくれたまえ。


「あとはいろいろ飛ばすけど、最後はクレジットだね」


 クレジットはそのまま関係者の活躍を名義を借りてクレジットに記載することを指す。

 『歌』はななかだけど、他のみんなはどうするか決めてもらわないといけない。ネットでは便宜名を用いるケースがほとんどだ。声優の場合は除く。まぁこの活動自体がどういう結末を迎えるためのものかまでは決めてないからそのうちこのグループの方向性を決める必要があるな。


「ネット上の名前だな。適当でいいならオレがみんなの決めるけど」

「私はもう決めてるから大丈夫だよ~」


 ななかはそうだろうな。


「二人もどうしても決まらない以外は自分で『名前』を決めてほしい」

「な、なんでも……?」

「そうなんでも。オレは特にこだわりないから名前で『ショーヘイ』で活動する予定」

「私は『まきさきななか』だよ!」

「まきさき……」

「そう! ひらがなでまきさき!」


 頬を赤くしながら悠希がオレとななかを見ている。器用に足だけでつんつんしてくるななか。これはカワイイ。


「まぁコレは特殊だけど……本当になんでもいいからな」

「うん、わかった! 葉! あとで作戦会議だよ!」

「う、ん、わかったよ……」


 あ、これはダメなやつだ。押し切られるぞ! もっと気持ちを強く持て葉介!


「やらなきゃいけないのはこんなところかなぁ」

「企画って大変だね~」

「でもどれにでも口を出せて、支配できるポジションだから楽しいよ」


 コート上の支配者みたいな言い回しになっちゃった。


「支配者……!」


 あ、そこに引っ掛かったのね。キミ、厨二病の素質あるで?


「祥平もだよ?」

「心を読むんじゃぁないよ……」


 心の中でニヤニヤしてたらななかがニヤニヤしながら釘を刺してきた。ここでぽかんとしている葉介、お前もそのうちこっち側に来るぞ。気を付けろ。


「ってことでこれからオレは仕様書を作るから」

「旗色悪いねぇ……」


 お前のせいやぞ。


「仕様書ってどうやって作るの?」

「うーん、パ〇ポ?」


 本当は表計算ソフトとか文書作成ソフトがいいんだけどこの時代のソフトって現代人にとってはめちゃくちゃ使いづらかったから仕方ないね。あと身内しかいないとはいえガイドライン作ってないから……すぐに使えるのはプレゼンテーションソフトのパ〇ポしかない。表計算ソフトのほうは今度までに作っておくから……。あと簡単に作れるのはこっち。


 個人的にパワポ使って発注書作るのは邪道だと思ってたけど、案外理にかなってるから社会人時代重宝してた。教えてくれなかったクソ部長ありがとう忘れてねぇからな?


「ぱわぽ……?」

「なんかを作るときに便利なソフトだよ」

「うーん、この情報量ゼロな感じ」

「いい感じに作っておくよ」

「そうだねぇ」


 じゃあなんて説明すればよかったんじゃ。

 その後オレはイラストを葉介に発注してそのあとのフローを悠希にも説明した。なおななかは説教した。特に理由はないがななかは笑っていた。


 そんなこんながあって調整諸々したあとの1週間後の土曜日。

 今日は収録当日である。まだキャストはいない。


「父さん今日は手伝ってくれてありがとう」

「こっちこそだ。フリーランスになってからは時間も仕事も余裕が持てるようになったからな」


 あの後父さんは専属を止めて提携する形でフリーランスになり、それと同時に作曲家として独立した。主な収入はYouChubeの広告と楽曲使用料らしい。あとなんか燻製も始めた。たまに夕食に並ぶときはあるけどこれはなんでだろう?


「父さんの夢とか邪魔になってなければよかったんだけど」

「やりたいことは自由にできているから細かいことは気にするなよ」


 どうやら良い方向で進んで行けてるみたいでよかった


「それよりも今日はいいのか」

「大丈夫だよ。オレよりも先を行く女だからね」

「……お前がそこまでいうなら」


 事務所の意向とはいえ元プロ声優だ。ななかのことだからこなされた課題は完璧にクリアしているはずだ。収録ミスや失敗なんてものはない。


「おはよーございまーす! 今日はよろしくお願いしまーす」

「せめてチャイム押せよ……」

「あとで家族会議かな……」


 失敗あったわ。元気一番、大声で勝手に家に入ってきた。収録スタジオは家の一角にあるから仕方ないけど。


「おはようございまーす!」

「ななかうるせぇおはよう。せめてチャイム鳴らしてくれよ」

「はーい」


 反省の色はありません。あとで説教な。


「葉介たちは?」

「もうちょいでくると思うよ」

「そう? わかった。あ、おじさん! おはようございます! 今日はよろしくお願いします!」

「うん、よろしくね」


 父さんは今日メインオペレーターとして手伝いを頼んでいる。オレはその機材やソフトの使い方を勉強させてもらうサブオペ兼ディレクター、ななかはキャスト担当で悠希はクライアント担当。葉介? モチベ上げてもらう担当(自分)。


「で、コンディションはどうなん?」

「もち! ばっちしだよん!」

「そりゃよかった。オレらの一発目だから気合の入った歌を頼むよ」

「まかせろり! 元プロの意地をみせちゃうからねん」


 ドヤ顔でふんすとも言いそうな顔で自信満々に答えるななかはとても心強い。

 と、奥からチャイムの音が聞こえた。


「葉介たちかな?」


 出迎えしたら葉介たちが到着したようだった。時間は5分前……。まぁ今は大丈夫だろう。昔ならクソ上司にぶん殴られていたと思う。現代に生まれて……どっちも現代だったか。おいおい教えていこうかね? でもそこまで口をだすのもなぁ。どこかのタイミングでななかと父さんに相談してみよう。


 今回収録は歌ってみたなのでフルコーラスではなく1コーラス毎で取ってもらおうと思っております。まぁ体力の問題とコンディション、抑えている時間がしっかりあるということでそれを活かして制限時間いっぱいでの収録となった。注意事項を伝えてからオレたちはに戻り、ななかは収録ブースに入った。


「スタジオqueないからこっちがどうぞって言ったら歌い始めてね」

「わかりましたー」


 たまにあるqueランプなしスタジオだけど同人でもプロでも対応は変わらない。

 ということで収録が始まります、実況解説はありません。

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