素直でよろしい、120点!
例の日から数日後、週末の土曜。
オレたちはまたオレの家に集まって作戦会議をしている。内容は企画についてのお勉強会だ。ちなみにお昼はオカンが作ってくれたカレーだった。
「さてお昼も終わったし企画について勉強するぞ~」
「おおー!」
返事は悠希だけだった。それも仕方ないことだ、ななかは曲選びに夢中だし葉介はパースの勉強中だからね。じゃあ余った……じゃなくなにもすることがない悠希は一緒に企画の勉強会だ。
「で、今日は企画についてだけどこれは実際に動かしながら覚えてもらいます」
「わかりました先生!」
先生……そう呼ばれる日がくるとは……感慨深いわけない、特に感想はありません。オレは一度も先生なんて言ったことないから子供特有のアレでしょう。
「でも実際に動かしながらって何も知らないけどいいの?」
「それは大丈夫。しばらくは同じことの繰り返しだから1回目はしっかり教えながらやるし、2回目からはその時次第で決めればいいよ」
「そーなのかー」
それあなた知らないでしょ。
「ということでまずは『歌ってみた』の企画から始めようと思います」
「わー」
歌ってみた。人気曲やネットの曲をカバーして歌ったものをSNS……YouChubeやニヨニヨ動画などのSNSや動画共有サイトに投稿したものを歌ってみたと称している。
前世では2000年代後半くらいからネットで中高生に流行りだしたが現代ではVtuber世代によって再熱しだした印象だ。
調べたところ歌みた自体は珍しいものじゃないがこの時期に始めた人間はかなり少ないため、今から始めれば知名度を上げるのはそこまで難しいことではない。あとはななかの選曲と努力次第。
「といっても曲自体はななかが選んでるからオレらのやることはほとんどないね」
「がーん!」
仕方ないでしょう。歌みたの大部分はそこだからね。
「だから勉強についてはネットでどんな曲が転がってる、なんの曲か、ジャンルは何か、流行曲は何かなど、いわゆる『トレンド』ってやつを悠希には調べてほしいのよ」
「うーん」
ははーん、さては悠希、探す・調べるだけだと思っているな?
「トレンドは面白いぞ? 自分に合ってる曲や面白そうな曲、自分が歌ってみたいみたいな曲を発掘できるんだ」
「え、そうなの?」
「そうだとも。もしななかとデュエット組んで歌ってみたいとか、自分も歌ってみたいとかあればそれも『企画』に組み込んでも良い」
「ほうほう……」
キミの場合知的好奇心を刺激されるから多分オレ以上にハマるよ。企画のオレが言うんだから間違いない。
「だからまずは自分が興味のある曲やジャンルを開拓、見つけてほしい」
「わっかりましたー!」
うむ、元気でよろしい。
この頃ネット環境については携帯がまだガラパゴス式と呼ばれる折り畳みのスマホがあるかないかという環境。なので自宅環境はオトンの仕事用パソコンかオレの安いノートパソコンしかない。残念ながら携帯からでは調べるのは操作が難しい、というか面倒くさい。面倒くさくない方は悠希に渡す。こんなところで躓いてしょうもないところでモチベ下げてほしくないからね。
「調べるって言っても何から調べよう……」
「そういうときは自分の好きな曲から調べればいいよ」
「そんな調べ方でいいの?」
「いいよ、まずは興味を持つことだな。自分が楽しくなきゃやってもつまらんでしょ」
「確かに!」
理解が早くて助かる。
というかクリエイターの一歩目も企画の一歩目も、興味を持てるかが一番最初にくる。もちろん大人になればそれ以外のしがらみもあるんだろうけども、子供なオレらは時間はまだたくさんあるから興味を持てるかだけで十分。
「うん、決めた」
ずっと静かに選曲をしていたななかが静寂を破る。
「『空色デイズ』にしようと思う」
「いいと思うよ。トレンド抑えてるし競合もそこまで多くないから」
言わずもがなでアニメ曲を抑えているオタクからしたらかなり有名な曲だ。天元突破グレンラ〇ンのオープニング曲で用いられて、オタク旋風を巻き起こしたと言われるただの神曲である。
「よかったぁ~、没されなくて」
「余程のことがなきゃ没にしないよ」
ちなみに補足すると、クソみたいな選曲してきたら速攻で説教するつもりだった。普通の選曲だったら没にしていた。なので、ななかも一応は企画の趣旨を理解していて助かったよ。
あとは『いつ』曲を出せるかだけど。
「いつまでに曲仕上げる?」
「うーん、1週間あればいける?」
「なんの都合?」
「スタジオの都合」
「了解、なら1週間以内でオトンに相談するよ」
「助かるよ~」
トントンと話を進めていくが間違いなく悠希には伝わってない。
「歌ってみたに必要なのって曲と何かわかる?」
「はい! わかりません!」
素直でよろしい、120点!
「金と収録できる場所―――スタジオともいう2つが必要なのよ」
お金はそのままスタジオのレンタル費用。スタジオは1時間単位などで貸出してくれる場所が……この時代ではほとんどまだない。個人で進出しているスタジオもなく、大手のスタジオがほとんどを占めていたためかレンタル市場はほとんどないという事情。どうしようもないね。
ただスタジオ環境については自宅がそこそこ整っているので歌ってみたが最初の企画にあがったのが起因。整ってしまっていた、が正しいか。パピー趣味に本気出し過ぎでは?
今回お金は必要なく、スタジオも使ってない時間なら使っていいって話をパピーから承諾を得ている。なおパピー付き、新設設計。一応収録も知識はあるけどプロがいるなら安心できるでな。
「という理由からお金とスタジオが必要ってワケ」
「わかりました先生!」
まぁ詳細までは伝えてない。本人が企画のどこに楽しみを見出すかを気付いてくれるまでは詳しく語らん。一度に詰め込むのも無理がある。あと過去でやっていたとしても現代では本当にやりたいことかもわからないからね。
「てことで次はイラストの発注だな」
「ここで葉介の出番ってことだね?」
「そういうこと」
「え、よ、呼んだ?」
「呼んだ呼んだ」
楽しそうに絵を描いていた葉介が顔を上げた。
「次のイラストは葉介のような絵を描いてくれる人……イラストレーターさんにどんな絵を描いてもらうかを指示します」
「どんな絵ですか!」
「実はすでに決まっておりまして、こちらに用意している絵を格好よく描いてほしいのです」
「まるで3分クッキングみたい」
実物は出ていないし用意もしていない。無理です。
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