失恋した陰キャ男子、オンラインゲームで慰められた学校一のおひいさまに愛される
Y0324
第1話
「ねぇ和也……。私達別れよう」
その一言が、俺、宮原和也の頭の中で何度も繰り返し響く。
え……?と、間抜けな声を出した俺を、恋人である小林美咲は冷たい瞳で見つめていた。
「正直、和也って……地味だし、つまらないんだよね……」
何も言い返せない。
クラスでは、教室の隅にいるような地味な陰キャで、容姿もあまり良いとは言えない。
でもそんな俺を、美咲は受け入れてくれたと思っていたのに……。
「だから、橘君と付き合うことにしたの」
「え……?」
橘翔太――イケメンで運動も、勉強もできる、いわゆる完璧超人。美咲の隣にはそんな翔太が、勝ち誇ったように立っていた。
「あきらめろよ宮原、お前じゃ美咲は満足させられないんだからさ」
小馬鹿にするように言いやがって……。
悔しい……。だが何も言い返せなかった。
涙をこらえるのに必死だったのだ。
こんなの、漫画やアニメでたまにある寝取られじゃないか……。
「橘君、こいつの事なんてもう良いから、早く帰ろ?」
「おう、そうだな。じゃあまた明日学校でな。宮原」
そう言って俺の目の前で、美咲と翔真は並んで教室を出て行く。
俺はただその背中を呆然と見送るしかなかった。
次の日、俺は教室の自分の席でうなだれていた。
周りでは、俺が美咲に振られた事が広まっているのか、ひそひそと俺の方を見ながら噂話をしている。
正直もう帰りたい……。
「昨日の話、聞いたぞ。小林に振られたんだって?」
背中を叩かれて振り返ると、そこにいたのは親友の西園寺啓太。
地味で陰キャの俺とは正反対に、陽キャな雰囲気の啓太だが、昔からの付き合いで、所謂悪友というやつだ。
「……まあ、な」
ふと美咲のいる席を見ると、美咲は橘と仲良く談笑していた。
橘と話している美咲の顔は、俺と話している時と比べて何倍も楽しそうに見える。
ダメだ。見ていても虚しくなるだけだし、もうあの2人の事は見ないようにしよう。
「あんまり気にすんなよ! 世の中にはまだたくさん女の子がいるんだしさ、ほら例えばおひいさまとかさ」
そう言って指指した先には、この学校のおひいさまと呼ばれる白崎凛華がいた。
腰まで伸びる長い髪で端麗な顔を立ちをしていて、文武両道、成績優勝。
おまけに男女問わず誰にでも丁寧に優しく話すことから、この学校の生徒からはおひい様と呼ばれている。
「いや……絶対無理だろ」
考える間もなく俺は即答すると、啓太は「だよな」と笑って肩をすくめた。
美咲でさえ、俺と釣り合っていなかったのに、おひいさまとなんてもっと釣り合うはずがない。
それにもし、俺とおひい様がそんな関係になったら、クラスの男子から何をされるか……。
想像もしたくないな……。
自分の住んでいるマンションに帰宅して、ドアを閉めると、ひどく疲れている自分を感じる。
何もしたくなくて、ただベッドに倒れ込んだ。
「つまらない、か……」
スマホの画面をぼんやりと見つめながら、美咲の顔が頭をよぎる。
あの「つまらない」という言葉が、どうしても引っかかって離れない。
彼女に好かれようと、普段より明るく振る舞ったり、美咲の趣味に合わせたりもした。
それなのに何が駄目だったのだろうか?俺が陰キャだから?それとも、俺の趣味が気にいらなかった?
反論する間もなく橘に取られた自分の情けなさが、じわじわと胸に広がっていく。
「俺って何なんだろうな……」
呟きながら天井を見つめ、自己嫌悪に陥っていた時だった。
スマホにメッセージの通知が届く。
『久しぶり~! 元気してる~?』
「リリィ……」
思わず少しだけ顔が緩む。
リリィは、ゲーム内でよく一緒にプレイしているネット友達で、美咲と付き合う前までは、毎日のように夜中まで通話をしながらオンラインゲームをする仲だった。
『久しぶり、元気だぞ』
落ち込んでいることを悟られないように、返信する。
『良かった~。久しぶりに一緒にゲームやろうよ』
ゲームか……。気晴らしにやってみるかー。
俺は分かったと返事をして、パソコンの前に座り、ゲームを起動することにした。
次の更新予定
失恋した陰キャ男子、オンラインゲームで慰められた学校一のおひいさまに愛される Y0324 @runaruna00332244
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