小汚い書物

「未唯?本当に大丈夫?さっきからぼうっとしてるけど...」


心配しながら私の顔を覗き込む慧さん。


慧さんの顔がイケメンすぎて


心臓がキュッと縮まる音がする。


「大丈夫!」


そういえばさっき慧さんに


巫女の仕事を教えてもらったけど


なんだったっけ?


というかここに来てから


物忘れが激しいような...


「あの..慧さん、申し訳ないんですが巫女の仕事ってなんだったかもう一度教えて貰っても...」


「お主、さては忘れん坊だな?」


「違う!ここに来てからおかしいんだって...」


私とイルムの会話を見ている慧さんは


何一つ表情を変えなかった。


「そうか」


「巫女の仕事は『神隠し』だ」


「さっき見せなかった書物、これ読んだ方が早いかもな」


そう言って慧さんは古くて小汚い本を


私に渡した。


その本を開いて中身を読んでみた。




[巫女の仕事は神隠しなり、神隠しは森に迷いし子を助け、生か死を選ぶもの。しかし、生死を問うのは人生のことだけでは無い。


神隠しは " 必ず " 【狐の嫁入り】に行え。さもなくば、全ての神、黙っておられぬ]




神隠しってあの神隠し?


森に迷い込んだ子供が消えるっていう...


というか狐の嫁入りって...天気雨の日のこと?


そういえば全ての神って..誰をさしてるの?


「読んだか?」


私が悶々と唸って考え事をしていると


慧さんが目の前に来た。


「....はい」


「分かった」


そう言って慧さんは私からその本を取り、


本堂の奥へ歩いて行った。

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