第55話 元勇者パーティのこれから
魔王撃退から二週間が過ぎた。
あれからしばらく休養を取ることにして学校では授業を受けだけにしていた俺達は、久しぶりに部室に集まった。
「さて、これからのこの部活動についてだが」
今日はそのことについて話し合いをせねばならない。
「勇者との役目も終わって、俺達が人助けをする意味なんてなくなった。ならばこの部活で勇者部としての活動はもう必要なくなったわけだ」
フィロ神はこの世界に危機が迫っているということを伝え、前世で勇者として生きていたように同じく人助けをすることでその記憶を引き出す為の活動をしていた。
しかし、その魔王も倒し、この世界は救われた。
となると、俺達がこの活動を続けている意味はなくなる。
「この部活は以前のように普通の漫画研究会に戻そうと思う」
俺はそう説明した。
「これまでのお悩み相談もなかなか大変でしたものね」
「もう俺達の能力も消えちゃったし、前みたいなこともできないっすしね」
これまでやっていた活動が一つ終わるのは寂しいものがある。
だが、しかし得たものもあるのだ。
「確かに少し寂しくもある。だけど、これまでの活動である程度この部活の信頼も集められることになった。それだけでもただ漫画を描いているだけの部活ではなく、立派な慈善活動をしてる部活とも認められた。そうなると、俺達はただの文化部ではあったが、それ以上のものを手に入れただろう。そこでだ……」
俺は今後の活動についてホワイトボードに書き込んだ。
「俺達は記憶を消さずにそのままでいた。その理由の一つに異世界ものを描くにはこの経験が役に立つ、とフィロ神に言った。だからこそ、これからはより本格的なリアルな異世界ものの漫画を描く活動にしよう!」
と、宣言した。
これなら漫画研究会としての活動と一致している。
「こんなのはどうだ? 俺達が前世でフィローディアで冒険していた時の出来事を漫画にするんだ。俺達はこの地球からいえば異世界で生きていて、本当の異世界転生をしていたようなものだ。だからあの世界での出来事を思い出しながらその漫画を描く!」
それが実に漫画を描く部活動として合っている。
「あはは、確かに俺達だからできることっすよね」
「本当に異世界で冒険をしてきたのだからそれは実体験としてリアルに描くことができるだろう。これはいいリアリティだぞ。現代の需要にも合っていて、さらに俺達は本物の勇者ときた。完璧だろう」
「じゃあ、これからはその漫画を描く活動にするんすね。確かにまさに俺と兄貴が描きたいと思っていた傑作が描けるかもしれないっす。俺も頑張るっすよ!」
「私もお手伝いしますわ。人数は多い方がいいでしょう」
「ありがとな。じゃあ、俺達の今後の目標も決まったな」
本格的な異世界ものの漫画を描く。それはまさに異世界で生きていた俺達だからできることだ。
「なんならこれを連載にしてウェブ漫画としてアップする方法もあるぞ。もしかしたら、俺達なら傑作が描けるかもしれないぞ! いつかは賞で受賞して連載できたり……なんてな!」
「あっはっは! それはでかい夢っすね!」
「でも、楽しそうですわ」
「ああ、じゃあ早速何かアイディアを描いてみようぜ!」
俺達は大きな夢を見ることにした。
勇者パーティとして生きて、その誇りを大事にする為に、これからはそれを生かした活動をすると。
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