第42話 決戦の日の為に
この日から俺達はありとあらゆるシミュレーションをした。
平和楽ドームで美智香のコンサートが開催される日にフィローディアとこの世界が繋がるゲートが開く。
その日に魔王ロージドがその会場にてこの世界に降臨する。
ロージドはその日を狙ってこの世界に侵略し、歌姫であるミゼリーナ姫こと美智香と、その場にいる観客を利用して力を膨大させてこの世界を戦略しようと企む。
つまり、そのコンサート会場が俺達の勝負の場所となるわけだ。
コンサート会場で戦いをするということはどういうことか。
まずは観客を避難させねばならない。大勢の人々がいる場所で俺達が変身して一般人にとってはわけのわからない魔王を相手に戦うなんてただの騒動を起こすだけだ。
そしてミゼリーナ姫こと美智香も避難させねばならない。けしてロージドに美智香を狙わせてはいけない
コンサートが始まるとゲートが開き、きっと会場は混乱に包まれるだろう。
スタッフや観客を避難させてドーム内にフィロ神が結界を張って外からは出入りできないようにする。なので多少は激しい戦いがあってもこの世界の人間に見られることはない。
そこを俺達がその閉鎖された戦場であるドームの中で魔王を倒すという戦法だ。
「まずはロージドが出現したら俺が光を出して戦場になる場所を照らす、岸野さんが俺達に防御魔法をかける。淳が俺達に魔王が俺達に近づけない風魔法をかける。そしてミニドラゴンに変身したモモ太が空中からロージドの周りを飛んで相手の視線を惑わせる……といった具合か」
「フィロ神は結界は長くは持たないって言ってたっすよね。ロージドが外に出られないようにその戦場のみに閉じ込めるかわりに、俺達もその間は外に出ることができないって」
「それだとなるべく短時間で戦いを終わらせるってことが大事ですね。でなければ私達も危険ですわ」
「またあの時みたいに僕らが全滅するなんてことになったらやばいですよね」
勝負は一回きり。もしも俺達があの時のように魔王に敗北したりすればあの時の二の舞だ。
「だからこそ、今回は切り札があるだろう。あの剣だ」
フィロ神があの世界の精霊を集めて作り出した特殊な剣。
これはロージドが生贄の儀式を行った時には持っていなかったものだ。
だからあの時とは違い、強力な武器が俺達にはあるということになる。
「この武器は一回しか使えない。だからいざという時だけだ。だからそれには早くに決着をつけることが大事だ。この剣であいつを斬りつけることができれば、俺達の勝利だ」
フィローディアとこの世界が繋がるゲートが開くのはこの日だけだ。だからここでロージドを食い止めれば、この世界への侵攻は防ぐことができる。
「俺達でこの作戦なんて成功できるんすかね。ちょっと不安っす」
「あのロージドを倒すことができるのは俺達だけだ。この世界にあの魔王と戦うことができるやつはいない。魔王を倒す能力は元勇者パーティの俺達にしかない。確かに不安な部分はあるけど、俺達は俺達のできることをするしかないんだ。自信を持とう、あの頃の姿に変身すれば力もあの世界と同じ強さを引き継いでる。俺達はあそこでは何度も苦難を乗り越えてきただろう。弱気なままじゃ何もできないぞ」
リーダーの勇者である俺が弱気になっていたらしまりがない。
「俺達、勇者パーティの役目は魔王を倒すこと。それは誇りだと思うぞ」
そう、俺達は一応勇者パーティだったのだ。その目的を達成させるまでだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます