第25話 いじめっ子の秘密
翌日、俺達は例のいじめの当事者である森崎博が登校してくるのを見た。
山崎君の写真で見たから外見は知っている。
今日は学校を休まずにちゃんと登校してきたようだ。
ならば作戦開始だ。
「行け、モモ太」
「はい」
俺はモモ太を地面に放った。
モモ太は強化された身体で素早く走り、森崎の通学リュックにへばりついた。
身体の小さいモモ太をスパイにするというわけだ。うまく森崎のリュックやポケットに入る、あるいは体にしがみついて森崎のことを見張る。
モモ太には俺と通信ができるテレパスの能力がある。それを使ってうまく俺に情報を伝えるというわけだ。
「頼んだぞ、相棒。見つかるなよ」
(わかりました)
こうして森崎の動向を探るのである。
授業中、時折モモ太に脳内でテレパスで連絡を取りあう。
テレパスは心に直接通じるので他の人には聞こえないし、俺も声には出さない。
(モモ太、どうだ? 何か変わったことはあったか?)
(今のところ、何もないです)
そうして一限目と二限目はいつも通りに終わった。
動きがあったのは三限目だ。
(ご主人、あいつ授業をさぼってどこかへ行きましたよ)
三限目の授業が始まる時間だというのに、森崎は休み時間から教室に戻らず、どこかへ移動してるとのことだ。
(よし、そのまま見つからないように続けろ)
(了解です)
三限目が始まって二十分が経過した頃だった。
(ご主人、あいつ体育館の裏で中を覗き見してます!)
そんな情報が入ったのだ。
(今、一年生が体育の授業をやってるみたいなんです)
一年生の授業?
あいつは二年生のはずだ。自分のクラスは他の科目の授業をやってるのに、なぜ別学年の体育の授業を見に行ってるのだろうか?
それはさぼってまで行くほどなのか?
すると、モモ太の慌てたような声が脳内に響く。
(ご主人、森崎がスマホで女の子の写真や動画を撮っています! しかもやたら下からのアングルで! そしてさっきからやたら女の子ばかりを撮ってるんです)
(なんだって!?)
森崎が何をしているのかを察した。
あいつはつまり、女子の隠し撮りをしているのだろう。こうして自分の授業をさぼって、他の授業を覗きに行く、そして本人達の許可も取らずにスマホで隠し撮りをしている。
一体なぜそんなことをしてるのか? 女子の動画や写真を撮って何に使うのか?
俺が首をかしげると、またもやモモ太のテレパスが響いた。
(ご主人! こいつ動画や写真を撮った傍からそれをLINEで他のやつに送ってます! しかもこいつ、スマホのズーム機能を使って女の子のお尻や胸をアップにした画像を送ってるみたいなんです。「一年二組の美紀ちゃんの写真は千円」とか書いてます)
大体流れが読めてきた。
なるほど、こいつは隠し撮りをしていてそれを他のやつらに送っていて、それで金を取り小遣い稼ぎをしていたというわけだ。最近になってよく授業をさぼったりするとのことだからごく最近始めたのだろう。
うちの高校はアルバイトが禁止されていない。それならば高校生ができるバイトなんてたくさんあるはずなのに、なんで盗撮というそんなバイトをしているのか。
それは自分の欲求を満たすことができて金まで手に入るからだろう。
一石二鳥ってわけだ。
最近になって保坂君をいじめるようになり、なおかつこんなことまでしている。
それはやはり保坂君の妹さんに振られたことが大きいのだろうか?
家に遊びに行くほどの仲だったのだから、そこそこ親しかったのかもしれない。
だからこそ、振られたことがショックで悪事にまで手を染めたということだろうか。
前はまともだったやつがこんなにも堕落したやつになっちまったってことか。
(モモ太、そこまででいい。見つからないようにこっちへ戻ってこい)
(わかりました)
そして放課後、俺は部活にて会議を始めることにした。
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