第24話 いじめられている保坂君
翌日、山崎君は例の保坂君を連れて部室へやってきた。
「は、はじめまして……。山崎君がこの部室に一緒に行ってほしいとのことでここへ来ました」
保坂君はメガネを一件真面目そうな男子生徒だった
。
しかし、目元に隈がうっすらと見える。不安定な日々であまり寝ることができないのだろうか。
精神的に苦しんでいるように見える。
「さ、どうぞ」
岸野さんが二人にお茶を出し、保坂君はそれを飲んで少し落ち着いたようだ。
「ではまず話をしますが……。山崎君から君のこと聞かせてもらいました」
そう言われると、保坂君は困った表情になり、隣の山崎君に言った。
「山崎君、この人達に僕のことを相談したのかい? 言わないでくれって言ったじゃないか!」
「でも、君のことをなんとかしてくれそうなのって、ここがいいと思ったんだ」
保坂君は自分がいじめられていることは家族にも話していない。
そんなことを他人に話してしまったのかと嫌なのだ。
「安心してください。俺達はこんなこと他の人に一切言いません。君の家族にも、教師にも周囲にも。これはお仕事ですから」
「そうっすよ。俺らはみんなの困りごとを解決する為にいるんすよ!」
「そうですわ。私達にお任せしてください」
そして面談が始まった。
「大体の話は聞かせてもらいましたが……。できればそのいじめてるやつのことについても情報を知りたいんですよ。俺達が直接会いに行くよりは、まずはクラスメイトである君達によく聞いておいた方がいいと思いまして」
保坂君は少しモジモジし始めた。自分がいじめられていることをあまり言いたくないのだろう。
「そいつは森崎博って言います。以前はまともなやつだったんですけど、ある時からやたら僕に絡んでくるようになったんです。あいつが前に僕の妹と付き合ってて、そしたらどうやら別れたみたいで、それ以降やたら僕に絡んでくるようになったんです」
大体は昨日、山崎君が話した通りだ。
「元々はそこまで乱暴だったやつじゃなかったです。でも妹……夏美に振られてからあいつは変わってしまいました。僕に対して八つ当たりなのか殴って来る時もあるし、あいつらにパシリにされてジュース買ってこさせられたり。それでいて言うことを聞かないとお前の家に行くって脅すんです。そしたら妹に何されるかわからなくて怖いし、何もできないんです」
「うーん。なかなか乱暴者なやつだな」
「妹が元々付き合っていた男に僕がいじめられてるなんて家族に知られたくないし、妹が知ったらきっと怖くなると思います」
「それはそうですわ。そんなことを考えていてずっとお辛かったでしょう」
「はい……」
岸野さんの人柄の良いところと優しさは依頼主を安心させる。
さすがは前世では教会の娘だ。慈悲がある。
「そいつ、最近何か変わったこととかないですか? 何か不審な動きをしてるとか、怪しいこととか」
「怪しいこと……」
山崎君と保坂君は顔を合わせた。
「そういえば、あいつら最近やたら授業をさぼるんです。休む日も増えてきて。以前はちゃんと真面目に授業受けてたし、全然休まなかったんですけどね。でも僕としてはあいつが休んだ日は今日はあいつに会わなくて済むってことで安心できる日なんですが。その時は平穏で過ごせます」
「授業をさぼる、そして休む日も増えてきてる……か」
以前はさぼり癖のなかった奴がここ最近になって休む日が増えている、それは気がかりだ。
「わかりました。こちらからも何かできないか探してみます」
「本当ですか?」
「まずは調査してみようと思います。それから解決方法を模索します」
何かいい方法はないか、それにはまずこちらから動く必要があるだろう。
今日はそんな形で話をまとめ、二人には帰ってもらった。
「どうするっす? そいつら、なかなか手ごわいんじゃないっすか?」
「ふむ。確かにどうすれば解決法が見つかるかはわからないな。ただ、あいつらが最近よく休むというのが気がかりだ。休んでいるのは何をしてるんだ? その秘密を探れば何か解決方法が見つかるかもしれない」
俺は自分の通学リュックのチャックを開けた。
「モモ太、お前の出番だ」
ぴょこ、とモモ太が出てきた。
「何をするんです?」
「あのな……」
俺はモモ太に作戦を話した。
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