第11話 初めての依頼、スタート

 次の土曜日、作戦を実行する為に俺達は電車に乗って隣町へ来た。


「あそこが例の駅ビルだな」


 宮下さんに言われた通り、妹の和美ちゃんがよく行くという駅ビルにたどり着いた。


 とはいえ、都合よく妹さんがこの日にここへ来るかはわからない。


 お気に入りの場所とはいえ、そんなにうまく遭遇できるだろうか。


 可能性に賭けるしかないが、手分けして探すしかない。


「じゃあ俺と淳はあっちの方を探すか」


 とりあえず、ここは分かれてそれぞれでこの駅ビルで和美ちゃんを探すことにした。


 宮下さんに写真のデータはもらっているからこの女の子を探せばいいだけだ。

少し背の低めの宮下さんによく似た女の子。


 普通の中学生ならば一般人と見分けがつかないが、明るい茶髪で赤いメッシュを入れてるとなると、それは通常よりも目立つファッションだ。そんな特徴があるのなら見つけやすいかもしれない。


「ブティックなど女性向けのお店は私に任せてください。そういう店は女性の私の方が入りやすいと思います」


「そっか。妹さんはそういう店に行く可能性もあるんだな」


 中学生とはいえ、髪を染めるくらいなのだからファッションにも興味がある女の子だろう。

 それだとすると、そういった店にいる可能性も有る。


 確かに女性向けの店に俺と淳のように男性が入ったらそれは怪しまれるかもしれない。


 女性だらけの店に男が入る、それだけでいい印象はないだろう。それなら女性向けの店は女子である岸野さんが頼りになる。


「和美さんに似た子を見つけたらご連絡しますわ」


「わかった。じゃあ俺と淳は本屋とかそういうとこを探すよ」


「ういっす。徹底的に探すっすよ」


 というわけで俺達はそれぞれ別行動で和美ちゃんを探すことになった。





 それぞれが分かれて別行動を始め、俺は駅ビルを探した。


 本屋の方面を探すが、それらしい女の子は見当たらない。


 目立つ髪型をしてるのだから、すぐに見つけられるかと思ったが、そもそもこの日にここへ来てるとも限らないのだ。


 土曜日に和美ちゃんがお気に入りの場所ということで可能性にはかけたが、だからと いって確実に会えるとは限らない。


 それでも何もしないよりはマシだ。そう思い俺は必死で探した。


 しばらくすると岸野さんからLINEの通知が入った。


 俺達は「勇者パーティ」というグループを作ってそこで話し合いなどのやりとりをしている。こういう時はここに通知を送るのが俺達のルールだった。


 何か手がかりでも見つけたのかと思い、スマホ画面のLINEを読む。 


『それらしき女の子を見つけました。アクセサリーショップで買い物してたようです』


 さすがは岸野さん。やはり女子中学生らしく女性向けの店にいたか。


 目立つ髪型なのだからもしもここに来ているのならば見つけられないかと思っていたが、ビンゴだ。


「今日着てる服とか何か特徴ない?」


 俺はすぐにそう返信した。どんな服装かがわかれば、あとを追いかけやすい。

『ピンク色のシャツで丈の短いデニムスカートを穿いていて首には月ハートのネックレスをしてます。足はブルーのサンダルで、腕には大きなブレスレットをしてますわ。お顔は、マスカラや薄いファンデーションにリップなどお化粧してますね』


 中学生にしてはやたらごてごてとアクセサリーを身に着けてるな。

 しかもメイクまでばっちりだ。

 そんないくつものアクセサリーやメイク道具なんて中学生のお小遣いで買えるものなのだろうか。

 アクセサリーが数百円単位の安物なのだろうか?


 まさか、前に一緒にいた男とやらに買ってもらったのだろうか。そんな考えすら浮かんでしまう。


『私がこっそり後をつけてみます。一瀬さんと加村君もそこにいらしてください』


 俺は岸野さんと合流することにした。


 淳にも「和美ちゃんを見つけた」とLINEを送り、合流する。


 そして岸野さんに言われた場所に行くと、そこには例のパンケーキカフェがあった。


 岸野さんはその店の近くで待機していてくれた。


「あの店に入っていきましたわ」


 和美ちゃんがお気に入りのパンケーキカフェ、やはりここへ来たのだ。 

「やっぱりここへ来たか。中に入ろう」


 俺達はそのまま後をつけてパンケーキカフェに入った。


 とはいえ、ターゲットの後を付けているのではなく、あくまでも普通の客としてだ。尾行してると怪しまれてはいけないからあくまでも一般人の客のふりをしてだ。

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