第2話 学園祭準備

「そこはこうして」

「白鳥、こっちの展示どうすればいい?」

「あは♡ もうちょい書きたいから待って♡」

 俺はそう告げると、書類の整理をいったん止めて展示の手伝いにいく。

 学園祭まであと三日。

 俺は俺にできることをしている。

「白鳥くん、すごく仕事ができね」

「ええ。かっこいいわ」

「感違いしている人もいるけど、顔はイケメンなのよね」

「そう。あとは性格ね……」

 苦笑ぎみでしゃべっている女子チーム。

 俺は気にせず展示品を並べ替える。

「お客さんの動線を確保するにはこっちの方がいいよ♡」

「おう。頼りにしているぜ。リーダー」

 俺は男トモダチに手を振り返すと、書類の整理に戻る。

「あんた本当にリーダーになったんだ」

 非鳥が怪訝な顔で近づいてくる。

「大丈夫だよ。キミとの時間も作るから♡」

「そんな時間いらないわよ。なんであんたはそうなの?」

「あれ? 俺との時間って最高じゃない?」

「ナルシスト、オメガキモい」

 どういう意味だろう?

「あは。まあ、いいや。こっちの会計の資料できたよ」

「もう? 早くない!?」

「言ったろ、キミとの時間を作るって」

 目がぐるぐる回る非鳥。

「ふ、ふん。どこのウマの骨とも知らない男と同じ時間をすごすなんて意味不明よ」

 意味不明なことを言っているな非鳥さん。

 俺とすごすの嫌なのか?

 いや、たんに恥ずかしいだけだろうね。

 うんうんとうなずく俺。

「なんか勘違いしていない?」

 ジト目を向けてくる非鳥さん。

「まあ、いいや♡ 学園祭当日は楽しみだね♡」

「いや、わたし彼氏と行くけど?」

「……」

「……」

 え。

「誰と!?」

「彼氏よ!!」

「誰よ。そいつ!?」

 意味不明なことを言い出す非鳥。

 俺はなんだか、心の中がざわめく。

「彼氏よ!!」

「知らないよ。そんなやつ!」

「言っていないからね!」

 非鳥は涙目になりつつ、俺を睨んでくる。

「ふ、ふーん。でも俺にも惚れているでしょう?」

「ないない」

 非鳥は悲しいくらいに真っ直ぐな瞳で俺を見てくる。

 ああ。本当にそうなんだ。

 彼氏、いたんだ。

 ショックだ。

 俺は目をそらし、書類を進める。

「あっそ。じゃあ、頑張ってね」

 素っ気ない態度をとってしまった。

「うそ、そんな簡単に諦めるの?」

 聞こえていないふりをして書類に目を通す俺。

 俺はもう彼氏のいる女子には手を出さないと決めたのだ。

 今更、非鳥が泣き付いてきても、手を出すものか。


 俺はそのまま学園祭当日を迎えた。

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