王子と玉子

夕日ゆうや

第1話 玉子

 「んふ♡」

 俺は玉子の王子様と言われている。

 実際、養鶏所の御曹司だから仕方ない。

 第二次玉子ショックでは玉子一パックが千円した。

 それを機会にうちのパパが合併吸収を繰り返し白鳥しらとり家が業界トップにおどりでた。

 今では非鳥企業がナンバーツーだ。その他の個人経営している会社もそのうち吸収するだろう。

 しかし玉子という物は面白く、一般大衆向けと、高級志向に大きく別れる。

「見て。白鳥さんよ」

「かっこいい。顔はいいのに……」

「んまっ♡」

 俺はすかさず投げキッスをする。

「きゃ! エイコ!!」

「AED持ってきて! 早く!」

 ……。

 俺は関係無いからな!!

 あわてて柱の影に身を潜める。

「誰だ。こんなひどい目にあわせたのは」

 先生すみません。俺です。


 まあ、俺は高級志向というわけだ。

 わかってくれただろう?

 お昼休み。

 俺はいつものお弁当を取り出す。

 玉子焼き、目玉焼き、チキンライスのオムレツ、錦糸玉子、かに玉。

 おお。テンション上がる!

「玉子玉子、ばっかじゃないの!」

「玉子は完全栄養食だぞ? 非鳥ひとり♡」

「はっ! 笑わせるわ。野菜こそが志向よ」

 この女、いつも食ってかかる。

 嫌味な奴。

 そういって野菜満点のお弁当をわざわざ目の前で開ける非鳥。

「非鳥、ぼっちなのか♡」

「はっ! ちげーし!!」

「だっていつもついてくるじゃないか♡」

「バッカじゃないの!」

 怒りで顔を真っ赤にする非鳥。

「お情けでかまっているって、わからないわけ!?」

「お情け? なぜ?」

 本気でわからない。

 顔も財産もある。

 おまけにいい性格だ。

 以前に「ホントいい性格しているな、お前」と言われた。

 彼は笑う時いつもひきつっていたが、まあいい。

 そんな俺を嫌う奴はいないさ♡

「何を考えているのよ」

 呆れたようにため息を吐く非鳥。

「それはこっちのセリフ♡」

「おえー」

「野菜の食べ過ぎだよ。生卵、飲む?」

「意味がわからないわ」

 頭痛でもするのか、こめかみに指を当てる非鳥。

「まったく、玉子の良さがわからないとは……」

 俺は首を横にふる。

「ホント意味がわからないわ……」

 非鳥が再度呟く。

 なんでわからないんだ。

 王子の良さが!


 続く♡

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