鉄拳の騎士
@sui_red_gerbera
Chapter1 プロローグ 鉄腕アキラ
プロローグ 1
全身が
――この変な格好してんのは……俺か?
顔を上げた晃の目には、敵対の意思を持った二つの存在が映る。
岩石を人の形に無理やり固めた異形と、指示を与える道化師の姿をした何か。
人かどうかも疑わしいそれらは、姿を変えた晃の様子に動揺していた。
――こいつらは誰なんだ?
晃の後ろで蹲るのは同じ高校に通うクラスメイトの女子であり、今起きている異常事態に大きく関わる重要人物。
晃とよく似た鋼鉄鎧を着ている彼女は、岩石の怪物から強い一撃をもらい体勢を崩していた。
――勢いで首突っ込んじまったけど、こいつもこいつで何なんだ?
「クソッ……やれ!!」
呆然と立ち尽くす晃の隙を、道化師は見逃さなかった。
手にした拳銃のようなツールを握り、奇怪に歪んだ声で命ずると岩石の怪人が晃に襲い掛かる。
――めんどくせぇ。いちいち考えてられるかよ!!
迫る拳に自らの拳をぶつけて立ち向かう。
ただの人間である晃の拳は、本来なら岩の塊である相手のそれとぶつかれば砕けてしまう。
「そんなもん効くか、ボケェ!!!」
だが、晃が何も理解しないまま伸ばした拳には鎧の力が宿る。
敵の力と拮抗してその力を相殺し、踏み込んだ足でそのまま拳を押し返す。
「この……ヤロォッ!!!」
殴り抜け、岩の拳を破壊する。
右腕を丸ごと失った怪人は一歩後ずさるが、特に狼狽する様子もない。
砕けた岩が虫のように這い回り、右腕のあった場所に集まって再生を始めていた。
「おいマジかよ、ずるいぞお前!!」
「剣晶を押し込んで!胴体を狙ってもう一度攻撃するのよ!!」
狼狽える晃に対し、女がようやく口を開く。
晃や女の纏う鎧の左手甲に埋め込まれた十字形の水晶。おそらくは鎧を通して晃に力を与えているであろうパワーソース。
言われるがままに剣晶を押し込むと、それはスイッチのように動作して機械音声を発した。
「EVERGREEN」「RE-IGNITION」
左腕の剣晶から鎧を通して暖かさが伝わり、戦う力を更に与える。
身体には未経験の感覚が、そして心には何故か懐かしさが。
矛盾に満ちた、奇妙な熱だった。
――やっぱり何もわからねえ。
でもやれる、殴れる。だったらやる!!
そして、身体中を巡った力が右腕に集中する。
手甲が物理法則を超越した動きで展開・変形・拡大し、怪人のものより大きな拳へと姿を変える。
「必殺技……ってやつか!?これならやれる!!」
今度こそ確実に仕留める為に相手を見据えた後に、気合いの叫びと共に巨大な拳で正拳突きを叩きつける。
「ウルトラドラゴンダイナマイトパァァァァァンチ!!!」
「ださっ」
晃の叫んだ必殺技のセンスに、女は思わず呟いた。
「えぇ……?」
晃の叫んだ必殺技のセンスに、道化師も思わず呟いた。
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