文章がいい。特にこの物語の一番のkeyパーソンになるルイに関しての、少し不思議な感じの雰囲気の描写がとてもよかった。彼女は、なぜ本屋で先輩である私がおすすめした本を片っ端から買っていったのだろう。それは本物のダイヤモンドが埋め込まれたキーホルダを主人公にプレゼントするところで明らかになる。つまりルイは有り余るほどのお金を持ち合わせているのだろう。でも、何かが足りない。彼女は日ごろからそれを自覚しているのだろう。その心の隙間を主人公である私と接近することで満たそうとする。ルイはきっと主人公のことが好きなのだろう。ルイの好意の示し方が独特なだけなのだ。
最後の卒業の後もよかった。告白ともとれる発言に、今までのなくしものがすっきりと、しかし奇妙な、若干怖いような形で見つかるのもよかった。
ただ非常に私の独断で書いてしまうのなら、最後の結末がどうなるのか、少し見通しに欠ける印象を受けたかもしれない。いや、しかし読み返してみると、それが少し不思議なこの作品の雰囲気を際立たせるために、作者によって意図的に仕組まれた、いわば必要不可欠な閉め方なのかもしれない。
ルイが現れる所が冷たい風で表されている所もよかった。