第2話 覚悟



うちは母子家庭で母親は頑張って働いている。


そんな母親に虐めにあっている事は話しずらい。


古柳の父親は県会議員で地元の権力者だ。


もし、母さんが動いてくれても無駄だ。


それに母さんが働いている会社は古柳の親父の親類の会社だ。


多分、泣き寝入りする事になる。


高校生なりに『権力』の怖さを知った気がした。


きっと誰に言っても無駄だ……


学園のあの態度。


古柳の父親は地元の権力者。


きっと警察に言っても無駄な気がする。


どうする事も出来ない……


誰も味方はいない……そう考えた俺は自殺を考えるようになった。


『悔しい』


ビルの上に立ったが、死ぬ勇気がでなかった。


不登校状態もそのうちバレる事になるだろう。


なんでこうなったのかな……


あの時、助けなければ今でもオタクとして平和に暮らしていたのか……


それともサッカーを頑張っていれば、こんな人生にならなかったのかな……


幾ら考えても今更遅い。


いつもの様に繁華街を彷徨い。


立ち読みが出来る古本屋で時間を過ごしていた。


いつもは見ない100円均一の本のコーナー。


そこにひと際惹かれるタイトルの本があった。


『殺人百科』


思わず手に取る。


昭和の本で人の殺し方が沢山書いてある。


毒殺、爆弾の作り方、何処を刺せば絶命するとか……


だが、情報が古い。


今だと、きっとバレるに違いない。


だが、そんな中で『擦り付け』という方法が書いてあった。


これなら、俺にも出来るかも知れない。


そうだ……これなら。


どうせ死のうと思ったんだ。


これを使ってやる。


古柳、俺の命と引き換えにお前を地獄に落としてやる。


そう決意し俺はその本を買った。


◆◆◆


次の日から俺は再び学園に通うようにした。


もう自殺するのは決めている。


そう考えたら虐めは怖くなくなった。


俺は柔らかな言葉で古柳を挑発する。


勿論、殴られたり、投げ飛ばされる。


「豚の癖に生意気な殺してやる」


ああっ楽しいな……幾らでも殴れ、幾らでも罵れ。


全ての会話は録音してある。


その一言がお前を地獄に落とすんだ。


幾らでも耐えられる。


俺は手を出さない……


さぁ殴れ、さぁ蹴ろ。


体は痣だらけになるが、気持は充実していた。


まるでサッカーを楽しくしていた時みたいだ。


◆◆◆


体はボロボロ、これで良い。


幾ら暴力を振るっても反抗的な俺に古柳は『殺す』とういう言葉を使うようになった。


ますます良い。


まるでマゾになった様に気分が良い。


怪我をしたら病院に行った。


しっかり診断してもらい、古柳という同級生に毎日暴力を振るわれている事を愚痴った。


どうせ、受け付けては貰えないが警察にも相談にいった。


『親と一緒に来い』とか『学校に相談した方が良い』そんな事ばかりだ。


どうせ古柳の親父は県会議員だから動かない。


だが、それで良い。


だが、これで準備は整った。


いつか誰かが調べた時、きっと古柳はとんでもない悪人と思われるだろう。







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