殺人百科  どうせ死ぬのなら……命を賭けた完全犯罪

石のやっさん

第1話 虐め

俺の名前は 泉翼(いずみつばさ)、まぁ気弱な何処にでもいる虐めに遭っている人間だ。


俺だって最初から虐められていた訳では無い。


子供の頃は、リア充に近かったかも知れない。


俺の親父は小さい会社を経営していた。


それなりにお金があり、将来はその会社の跡取りの筈だった。


外見も美形とまではいかないが、中の中位だったと思う。


サッカークラブに入っていて、それなりに活躍していたと思う。


だが、中学に入る頃に親父は事業に失敗していきなり家は貧乏になった。


その後、親父はそのせいかどうか解らないが自殺してしまった。


親父は生命保険に入っていた為に、減額された物のお金が貰えた為に借金を返してもお金は余った。


この頃から俺の人生は破綻し始めたのかも知れない。


小学校で頑張っていたサッカーも中学では練習量が多く、辛く感じ辞めてしまった。


運命を分けてしまったのは、ライトノベルとアニメだった。


今迄はアニメや漫画に嵌った事は無かったがふとした瞬間テレビをつけたら深夜アニメがやっていた。


いわゆる、異世界転移系のアニメで、ピンクの髪の貧乳系美少女の魔女が主人公の作品だった。


このアニメは嵌ってしまい、俺の人生は変わってしまった。


またこのアニメを見たせいで、ツンデレの美少女に無口な少女が壺に嵌ってしまって女性の好みが可笑しくなった。


当時社会現象になったのだからこれ位なら仕方ないで済んだかもしれない。


だが、俺はそれだけで納まらず、他のアニメと漫画に嵌ってしまった。


それらに嵌った俺はそれに時間を費やした為に、かなり学力が落ちた。


幸い、小中高大一貫教育の誠洋学園にいたおかげで高校にはどうにか進学出来た。


そこで、今迄とは違い、アニメや漫画が好きな仲間とつるんでいたのだが......


俺や仲間を、古柳という奴が馬鹿にしてきた。


「やれキモイ」


「オタクだ」


「臭い」


「キモイ」


そんな風に事ある事に罵ってきた。


確かに俺達はオタクだから仕方が無い。


だが、幼馴染の三上陽子がその巻き沿いで虐められそうになっていた。


おれの幼馴染だから、冷やかされて『豚の恋人』とか言われて泣いていた。


陽子は俺と違って一般人、オタクじゃない。


それに、悪いが外見もそこそこ可愛い。


オタクになった俺にも普通に接してくれる数少ない女の子だ。


ここで今思えば、キレなければ良かった。


「いい加減にしろ」つい、古柳に掴みかかってしまった。


その瞬間、凄い勢いで投げ飛ばされた。


「おまえさぁ......俺に勝てると思っているの? 俺柔道部の期待のホープだぜ? なぁ豚に豚って言ってなんで怒るのかな! お前100キロ越えているじゃん? 豚の幼馴染をと『豚の恋人』よんで何が悪い?」


鼻血を出して転がっている俺に此奴は言った。


俺の人生が落ちた瞬間だった。


横で陽子は震えていた。


周りは同調するように俺に罵声を浴びせる。


「古柳くんの言っている事間違ってないよね? デブ、豚と言われても仕方ないんじゃない!」


「真面に喋れない、運動も勉強も真面に出来ない、知っている?女子はみ~んなお前が嫌いなんだよね」



「本当、生きていけないよ......あたしがあんな外見だったら自殺するわ」



そうか......俺は嫌われていたんだ。


だが、俺は言わなくちゃいけない。


「俺はデブだから言われても仕方が無い。だが三上は違うだろうが! ただの幼馴染だ、つき合ってねーから関係ねーだろうが」


「そうかよ…….」


古柳が笑った気がした。


この日はこれで終わった。


だが次の日から俺の地獄が始まった。


「あのさぁ、翼って名前辞めてくれない......私の好きなアイドルと同じ名前なんだよね」


「…….名前だ仕方ないだろう」


「うざっ......まぁ良いや、豚男っていう名前があるんだよね……豚男って名前で呼ぶね」


ムカつくけど、女は殴れない。


「......」



その日から、俺の事を翼って呼ぶ人間は居なくなった。


俺は豚男、豚の様に醜い男......そう呼ばれる様になっていた。


アニメや漫画が好きな奴は割と弱者が多い。


だから巻き込まれるのが嫌で俺とは誰も話さなくなった。


更に虐めは酷くなり、給食にゴミが必ず入って居るのは日常茶飯事、廊下を歩いているだけで、クラスの奴に蹴りを入れられる。


教師に相談しても「こども同士の冗談だろう?」「やり返さないお前が悪い」そんな事しか言わない。


俺の担任の白百合は女教師だが、生徒に嫌われるのが嫌なのか「男の癖に女々しいわ、男ならガツンとやり返しなさい」と言うだけだった。


この学校は名門で文武両道を語っている。スポーツでは部がかなりの成績を出している。


だから、教師も脳筋が結構いる。


結局だれに相談しても無駄だった。


やりきれないのは陽子が古柳と付き合い俺を虐める側に回った事だ。


『助けなければ良かった』


何回も頭をよぎった。


高校での生活が辛い俺はそのまま死ぬ事を考えるようになった。

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