コレクション

牧太 十里

コレクション

 私は刃物を集めるのが好きだ。

 ナイフ、包丁、斧、鉈、山刀、鉋、鑿、鋸、等々。

 様々な種類の刃物がある。


 いずれ、陳列ケースを作って、展示室を作って・・・。

 休日の午後、そんなことを考えていると妻が、

「包丁が切れないから、研いでほしい」

 という。


 見ると、菜切り包丁も、出刃包丁も、万能包丁も、みな刃こぼれしている。

 何を切ったか訊くと、

「完熟のカボチャを切った」

 というのだ。


 完熟カボチャの皮は乾ききった薪くらいに硬い。

 いつも、

『俺が鉈で切るから、その時は教えろ』

 と話している。


 しかし、家内は自分でカボチャと対決した。

 結果は悲惨だ。


 砥石を調理台に並べ、数時間かけて刃こぼれをすっかり取りのぞくと、

「あれだけ刃物があるんだから、刃こぼれしたら、集めた刃物を使えばいい」

 と家内はいう。


 とんでもない話だ。集めた刃物をは展示用だぞ!磨きあげて曇り一つ無い刃物だぞ!


 そういえば、知人に集めた刃物を見せたら、

「いやあ、これだけあると、恐いですね。こんなのを持って襲われたら・・・」

 とふるえていた。


 私は、こいつは阿呆か、と思った。

 集めた刃物は鏡のごとく磨き上げてある。

 これらで物を切るなんて、これっぽっちも考えたことはない。

 まったく、コレクションと実用品の区別もできないヤツらには、困ったものだ。


(了)

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コレクション 牧太 十里 @nayutagai

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