~春光足る我が光から成る、瞬間(とき)に憶えた少女の人工照(あかり)~『夢時代』より冒頭抜粋

天川裕司

~春光足る我が光から成る、瞬間(とき)に憶えた少女の人工照(あかり)~『夢時代』より冒頭抜粋

~春光足る我が光から成る、瞬間(とき)に憶えた少女の人工照(あかり)~

 連々(つらつら)流行(なが)れる一番星を観て、俺を包(くる)める環境(あたり)の描写は一転していた。三つの思惑(こころ)が俺の身内(うち)にて人間(ひと)の体と接する程度に大きく膨らみ俺から漏れ活き、闇を遮る世間の灯(あかり)が、〝俺〟が幻想(ゆめ)へと如何(どう)する間も無く呑まれて行くのをひたすら傍観して居る脆(よわ)い主観(あるじ)が存在するのに、揚々気取られ、俺の心身(からだ)は〝彼女〟を愛する余りについつい我が身を放られ、暗い〝無暗〟へ浸透して生く脆(よわ)い〝各自〟を自己(おのれ)に見ている。天秤から成る二つの秤が宙(そら)から漏れ落ち自体(おのれ)を観る迄、〝俺〟の姿勢(すがた)に揚々彩(と)られる世間の明度(いろ)から遠く羽ばたく脚色さえ見え、「明日(あした)」へひねもす人間(ひと)の酒宴(うたげ)は血相化(か)え行き夢中を摘んだ。蝙蝠傘から〝俺〟に纏わる気楼(きろう)の態(てい)した泡(あぶく)が現れ、母を捜した俺の記憶は何処(どこ)まで活きても凋落し得ない。父の居残る端正(きれい)な跡目(あとめ)は夜目(よめ)の利(き)き行く無謀に見られて〝生気〟を着忘れ、昨日の宮(みやこ)にするする堕ち生く俺の結果を人間(ひと)の微熱に頂戴させ生き、自分に纏わる不思議な〝火の粉〟は頭数(かず)を数えず、〝土手〟に咲き行く野の花など観て、流行(ながれ)に添えない未熟の活路を暫く冷やせる〝土人(どじん)〟を晒して納得して行く。近々両眼(まなこ)に欠伸を灯せる輪舞曲(ロンド)が現れ、蒼い滴が点から落ち行き宙(そら)に返るを〝ここぞ!〟とばかりに承け取る様子は〝俺〟の過ぎ行く景色の向うに立脚され得ず、初めから在る空虚の水面(みなも)に神を観るまま共鳴(さけび)を識(し)り得た。到底現行(ここ)から果(さ)きへ灯せぬ癒しの女神(おんな)が朗笑(わら)って在るのを〝俺〟から零れた幻想(ゆめ)の小片(かけら)は〝経験されない白い壁〟など揚々照らして陽(よう)を着飾り、白壁(かべ)に打(ぶ)つかる人間(ひと)の延命(いのち)をこの世とあの世に律儀に仕分けてエロスを仕立て、〝俺〟が活き得る〝この世の屍(かばね)〟を〝ここぞ!〟とばかりに交響させ行く。交響させられ震えて行くのは人間(ひと)から体外(そと)へと体温(ぬくみ)を忘れて〝微熱〟の程度もすっかり狂える無感の生き血を呈する代物(もの)にて、俺が独歩(ある)ける軟い弾みの〝土手〟の上には偶然さえ無い人間(ひと)への定めが仄かに浮んで沈着して在り、〝各自〟が晒せる概念(おもい)の裾から俄かに湧き出る〝人間(ひと)を表す無数の火の粉〟が夜気(よぎ)を擦り抜け生長するまで〝俺〟の土台を〝この世〟で成し得る経過(ながれ)の早さは、誰にも何にも観えぬ程にて〝俺〟から始まる〝この世の物語(はなし)〟は型(かたち)を成し得ず沈着して在る。〝人間(ひと)〟を現す〝無数の火の粉〟は〝アルファとオメガ〟を我が物顔して成長させ行き晴れた青空(そら)から一向降(お)りない人間(ひと)への〝手綱〟を仄(ぼ)んやり見詰めて神など仰ぎ。人間(ひと)から鳴り行く滑稽(おかし)な寡黙を宙(そら)へ解(と)けさせ共鳴(さけ)んで在っては、これまで観て来た人間(ひと)の歴史に、〝俺〟の匣から一層翔(と)べ得ぬ天馬(てんま)を見る内、〝自白すら無い自然〟を象る気楼を垣間見、細い目をした俺の分身(かわり)は悪魔に寄り添い人間(ひと)の明度(あかり)を随分遠くへ置き遣り始めた。〝エロス〟を連れ行く煩悩(なやみ)の宮(みやこ)は人間(ひと)の悪事がことこと煮え立つ無数の微熱(ぬくみ)を放散し得て、俺に奪(と)れない空気(もぬけ)の肢体(かたち)が〝美幻(びげん)効果〟を発散する儘、俺の眼(め)を操(と)り人間(ひと)の気を奪(と)り、両脚(あし)を絡める疲労を携え〝俺〟へと活き果て、宙(そら)に漂う孤独な身上(からだ)を俺の目下(ふもと)へ放擲して居た。俺から成される人間(ひと)を生育(そだ)てる無数の小手には、これまで独歩(ある)けた幾多の気色が一連成るまま通用して活き、〝土手〟の景色に女性(おんな)が象(と)られて浮気に立つのを、俺から過ぎ行く昇天(そら)の衝動(うごき)が無言で見送る気色を採っては朗笑(わら)いながら、白壁(かべ)に打たれた人間(ひと)の空気(もぬけ)は白い歯を見せぐつぐつ観て在る。何にも気取れぬ奴隷顔したモンクの列(ならび)は俺の目下(ふもと)を夜毎に走れる〝夜汽車〟を撓(しな)らせ愚弄を忍ばせ、人間(ひと)の宮(みやこ)へほとほと落ち行くモルグの屍(かばね)を早天(そら)から過ぎ行く〝枯渇〟と見做せて愚笑(ぐしょう)した後(のち)、俺と〝彼女〟に悶々仕上がる白壁(かべ)の厚味(あつみ)は度量を成し行く目下(もっか)の奇跡と相成り始めた。女性(おんな)に咲き行く男性(おとこ)の元から壊せる怪力(ちから)はアダムの身内(からだ)に浸透して行く木の実の紅味(あかみ)を彷彿させ活き、水面(ここ)から仕上げる〝空虚〟を通せた人間(ひと)の華(あせ)さえ枯渇を識(し)らずに黄泉の国からのうのう吹き来る微温(ぬる)い微風を〝大口〟掲げて呑ませてあった。

 D大学にてそこで夢見た秋の日の事、国文学科の准教授である西田房子(にしだふさこ)に憧れから来る趣向の手綱が〝彼女〟に操(と)られて彷徨(さまよ)い行く頃、俺の背後(うしろ)に仄かに上がった淡い人気(ひとけ)が空(くう)を空転(ころ)がり人影(かげ)を追い駆け、何も掴めぬ秋の孤独を自分の脚色(いろ)へと煽動して活き、誰にも知られぬ初春(はる)の色気を〝彼女〟に投げ掛け呆(ぼう)っとして行く。俺の表情(かお)には他(ひと)から仕上がる奇妙な明日(あかり)が自滅を連れ添い躍起と成るのを、秋の風吹く肌寒さに見て減退していた人間(ひと)の脆(よわ)さがほろほろ見付かり、自分の程度をひたすらひたすら傍観して行く新緑(みどり)の時期(きせつ)を大事として居た。国文学への以前(むかし)から成る未知を呈した憧憬描写は、他(ひと)の意識に露とも載らずにひたすらまったり透るばかりで、他(ひと)への理想(ゆめ)など何にも問えずの脆(よわ)い童子が胸中(なか)に在るのに俺を擡げる〝遣る気〟の華(はな)には「明日(あす)をも識(し)れずの疾風(はやて)が仕上がり廃業(くず)が募って、他(ひと)の人影(すがた)を宙(そら)にも観得ない独歩ばかりの世界の描写はやがて曇らぬ「昨日」を連れ添い、俺の目的(あて)へと前進して行く。俺の環境(まわり)の日向と日陰は他(ひと)に彩(と)られぬ無暗が仕上がり仄(ほ)んのり紅(あか)らみ、人間(ひと)の誰もが表情(かお)と生気を背け始める独自の空気を担いで在った。故に俺から暫く観得行く近くと遠くは人目の無いまま人影(かげ)も見えずに、人間(ひと)の生気が上手く発(た)てない暗い〝路地〟など積み上げていた。西田房子は女教授ながらにD大学での保守派の空気に密かに寄り付き、自分を照らせる狭い研究室(へや)での密かな儀式(しごと)に男女を含めた成人(おとな)・小人(こども)を上手く従え密室へと置き、投げ遣られるほど人間(ひと)の孤独が女性(おんな)へ寄り付き〝地道〟に従い、牛歩が鳴り生く研究室(へや)と煉瓦の間(あいだ)を抜け行く狭い路地には、房子に干された〝時計回り〟が体好く吐き行く〝勢い〟さえ観て、「明日(あした)」の居所(いどこ)を暗(やみ)に伏せ行き判らなくした。俺の両眼(まなこ)はそうする房子を宙へ見上げて疾風(はやて)を着飾り、むんむん醒めない空手(からて)の防具を馬具に従え女性(おんな)を捨てて、男女(だんじょ)が独走(はし)れる〝狭い土手〟など日暮れが来るまで人気(ひとけ)を観て居り、明日(あす)へ咲けない人間(ひと)の華へは気球(ボール)を空転(ころ)がし哄笑(わら)って在った。人間(にんげん)嫌いが人間好きから仄かに上がった気力を従え吠えて在る為、〝彼女〟の元気が揚々仕上がる耄碌さえ識(し)る新緑(みどり)の宙声(こえ)には、誰にも聴けない〝ときの発声(こえ)〟など堂々巡りの〝谷〟に放られ人影(かげ)を着忘れ、誰も要らない何も要らない生粋(もと)の美声(じごえ)が俺の精神(こころ)へ揺り落ちて来た。西田房子は以前と変らずあっと言う間に体裁(かたち)を頬張り女性(おんな)を着熟し男性(おとこ)を弄(あそ)べる気軽の美声に消極する儘、短冊(ふだ)を並べる七月辺りの日本の古式に、自分の身分を重々認(したた)め、在る事無い事全部棄て行く大学教授に厚味を付した。俺の小声は美声(じごえ)に化け活き西田(かのじょ)の歯形をくっきり揃えて房子(かのじょ)を嗅ぎ付け、女教授(かのじょ)の生粋(もと)からうっそり仕上がる蛻の殻へと総身を賭した。〝彼女〟の幻想(ゆめ)から他に良く似た真綿の基準が薄ら咲く頃、七月辺りは急に冷め行く通風(かぜ)が駆け抜け俺まで冷やし、俺の躯(からだ)は窮地を識(し)り行く小動物へとその実(み)を侍らせ滑走して生き、俺が相(あい)した第二の〝彼女〟を薄ら浮べて悶絶していた。古来の郷里(くに)から俺の元へと〝彼女〟を通して見抜けた描写は、〝彼女〟の糞(くそ)からゆっくり上がった湯気の描写を体温(ぬくみ)に従え、俺の身内(うち)へとすんなり零れる無感な使途には何にも問えずの過酷の業など清閑(しずか)に伸ばされ、明日(あす)を象る房子の幻想(ゆめ)へは俺から仕上げる徒労の無駄など一足飛びにて目的(あて)から逸れ果て〝彼女〟は失(き)えて、男女の集(つど)った学舎を想わす古巣の日々には、昨日の体温(ぬくみ)を一切彩(と)れない〝泡(あわ)の夢路〟が悶絶始めて自身を蹴上げて、俺の身元(もと)から一向離れる俺の〝分身(かわり)〟が側溝(かわ)を観て居た。

 俺の身元(もと)から薄ら上がった湯気の辺りで女性(おんな)の全実(すべて)を埋裁(まいさい)して行く女の化身が今日も表れ、俺の前方(まえ)には初秋(あき)に咲けない陽(よう)の木の葉がにんまり幻笑(わら)って毒気を吐いて、何時(いつ)しか出会った障害(ハンディ)を背負える特殊な幼女が〝この世〟を忘れて仄(ぼ)んやり佇み、自体を追い上げひたすら走って便所へ駆け込む〝木の葉〟の丈夫を浅墓程度に覗かせても居る。俺の幻想(ゆめ)には「明日(あす)」を識(し)れない白壁(かべ)の前方(まえ)での脆(よわ)さが在るのに彼女から成る〝基準〟の豊富は底儚い儘〝未知〟へ通じて散漫さえ観て、無用を知れない女性(おんな)の衣(ころも)が俺の実(み)を奪(と)り宙(そら)へと拡がり、「昨日」を気取れぬ少数から成る雑音(ノイズ)の効果を、自分の実(み)を借(か)る短い延命(いのち)を上手(うわて)に見て取り紅実(りんご)を片手に、俺から透れる他(ほか)の男性(おとこ)へするする解(さば)けて解消され生く〝彼女〟の道理を煌めかせている。俺の前方(まえ)からずるずる解(と)け堕ち、艶(あで)に散らせた衣(ころも)を纏った子女(しじょ)成る童女(おんな)はA(エース)と名乗られ、俺から透れる怖い〝男女〟に落ち着く間も無く小脇に抱え、研究室(へや)から出て行く房子の背後(うしろ)にぴったりくっ付き強面晒した白壁(かべ)へ伝って〝未熟〟の愛撫を官能へと見た。A(エース)の環境(まわり)は俺に仕上がる無極(むきょく)の平常線(ボード)を謳(うた)へ落せる体温(ぬくみ)を取り持ち、無性(むせい)に気取れる微(こま)かな衝動(ノイズ)を自体(おのれ)の掌(て)に保(も)ち呑(のん)びり生長(そだ)てて、慌てふためく他(ひと)の快感(オルガ)は即興染み生くモルグの使途へとその実(み)を化かされ、明日(あす)の風気(ふうき)を一彩(いっさい)操(と)れ得ぬしどろもどろの暗気(あんき)を養い、苦労を挫いた安気(やすぎ)の節(ふし)にも一寸(ちょっと)似ていた。孤狼(ころう)を化かした男性(おとこ)の嫉妬はA(エース)を追い駆け地肌を透らせ、自分の〝分身(からだ)〟が何処(どこ)へ追い駆け何処(どこ)へ向くのか、一彩(いっさい)象(と)れ得ぬ無声(むせい)の古巣を捜索していた。便所から出た二人の女性(おんな)の柔い生気は俺の独創(こごと)を鬱に浸らせ自分に親しめ、桃色(はで)を着飾る便所の内(なか)へと一方通して俺を吸い寄せ、「明日(あした)」から鳴る無性(むせい)の空気に男女を従え両脚(あし)を衝動(うご)かし、〝ソドムとゴモラ〟の現行(いま)を透して人間(ひと)が堕ち着く永遠(とわ)の環境(あたり)を順応しながら真っ紅(まっか)を観て生き、他(ひと)の全身(からだ)が本能(なやみ)を連れ添い希望(ひかり)を夢見て、自身の救いを悪魔に求めた新たの試算に延命(いのち)を見て行く人間(ひと)の快感(オルガ)を呑み込んでいた。西田房子は自体の独気(オーラ)を自身に紡いで〝第二〟を消し活き、裁き切れない自身の女性(おんな)を鎌に幻想観(ゆめみ)て俺の〝男性(おとこ)〟を巧みに吸い行く孤独を誂え便所で燥ぎ、燥いだ麓に〝教会〟から来るKの瞳に大きな煌(ひかり)を集々(しゅうしゅう)重ねて頭上(あたま)に描ける無造の両極(きわみ)に誰にも見得ずの大きな歪(まが)りを悠々報せて両者を葬り、房子の熱想(おもい)に埋れる男女(ひと)には希望の輪なども一彩象(と)れない無限の仇(かたき)が弾みを生んだ。

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~春光足る我が光から成る、瞬間(とき)に憶えた少女の人工照(あかり)~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji

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