迷路に潜む怪物

出してはいけない

　住宅街は入り口があっても出口がない。住宅街に迷い込み、なぜここが袋小路？　出口どこ？　なんて思った人は少なくない。

────住宅街には魔が入る

　そう、迷い込むのは人に限った事ではない。ごくごく稀に迷い込むモノがいる。袋小路はソレを出さないためのものだとしたら？　

　それは知らない方がいいのかもしれない。

「涼くんおかえりー」

「たっくんのおばさん、ただいま。たっくん幼稚園から帰ってきてる？」

「いるよ、今日も涼くんと対戦したくてゲームの準備してたよ」

「やったー！　ランドセル置いたらすぐ来るから、たっくんにそう言っといて！」

　ぼくは家へと急いだ。たっくんの家は住宅街に入ってすぐだけど、ぼくの家は１番奥にある。歩くと５分かかるけど、走ればすぐさ。

　ぼくの家は道路の最終地点、袋小路と呼ばれるところ。家の前に車はほぼこない。道路で遊んでも怒られることはないんだ。いつも誰かしら家の前で遊んでいる。そんな場所だった。

　あ、今日は女の子ひとりだ。見たことない子だな。

「こんにちは、誰か待ってるの？」

「あ、こんにちは。ううん、近道をしようと思って住宅街に入ったら出れなくなっちゃって……」

「入り口からしか出れないよ。来た道戻れば出れるよ」

　「何度も迷ってたら右も左もわからなくなっちゃったの。お願い、入り口まで一緒に行ってくれる？」

「いいよ、１回ランドセル置いてくるね」

「うん」

　────オナカスイタ

　ココヲデタラ　サイショニ　タベテアゲルネ