あなたへ

窓側の机に向かうあなた

カーテン越しに新緑が見え隠れする。


スラスラとペンを走らせるあなた

私は、あなたのその後姿が好き。


ペンを走らせるあなたが好き


廊下の扉の前で互いに頭をさげて

互いの名前を知ったあの日

ぼさぼさ髪にヨレヨレのジャージ

イケメンの顔が台無しだよ。


受賞を知らせる電話

ふたりで抱き合って喜んだ。


ぎこちないスーツ姿だったけど

イケメンだから……まあ、いいか。


ある日、あなたは『あなたのことばを失くした』

ある日、あなたは『あなたのことばを忘れてしまった』


「書けない……」

苦しそうなあなたを見るのがつらい

追いつめられるあなたを見るのがつらかった。

私はあなたを後ろから抱きしめた。


窓側の机に向かうあなた。

ゆっくりとペンを走らせるあなた。


ゆっくりでいいよ。

あなたが『あなたのことば』を見つけられるまで

あなたが、『あなたのことば』を思い出すまで


だから、私は今日も待ちます。

そう、昔みたいにゆっくりと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る