桜の木の下で

桜の木の下で……

ランドセル姿の俺とあの子が、手を繋いで一緒に

歩く。


俺とあの子は高校生になった。

「うるせーな。 

そういうのがお節介って言うんだよ」

桜の木の下で……俺はあの子を泣かせた。


桜の木の下で……俺はあの子とすれ違う。

「一緒に歩くアイツは誰?」


桜の木の下で……俺はあの子に聞いた。

「アイツといて幸せ?」

「うん、幸せだよ」

「そっちは、うまくいってるの?」

「う~ん。まあまあかな……」


俺は下手くそな嘘をつく。


桜の木の下で……俺はあの子とすれ違う。

俺は、あの子の手を引き寄せた。


桜の木の下で……

あの子が俺を待っている。


だから……

桜の木の下へ俺は自転車を走らせる。


今日こそ言おう。これまでのことを……

今日こそ言おう。君への想いを……



あの満開の桜の木の下で……。

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